雅人は、美空が何を言おうとしているのか察した。ほとんど反射的に、「もういい、これ以上は言わないでくれ」と口にしかける。けれど、唇が震えるばかりで、言葉はどうしても出てこなかった。この先に続く言葉が、自分を耐えがたい苦しみの底へ突き落とすことくらい、わかっている。それでも、聞かずにはいられなかった。なぜなのか。どうして、こんなことになってしまったのか。美空の澄んだ声が耳に届く。その一言一言が鋭い刃となって、雅人の心を深く切り裂いていった。「篠原さんを好きになるのは、本当に簡単なことでした。あなたは優秀で、誰よりも輝いていたから。仕事の才能もずば抜けていて、何気なく口にした助言ひとつで、私はたくさんのことを学べました。でも、あなたを愛するのは、疲れることでした。7年間、私は必死にあなたの背中を追いかけてきました。隣に並べるようになりたくて、あなたが何気なく一歩進むたびに、眠る間も惜しんで追いつこうとしていたんです。いつの間にか、私の世界はあなたを中心に回るようになっていました。自分の好きなものさえわからなくなって、ただの『篠原雅人の秘書』になっていました。そこに私はいたけれど、私自身の人生なんてなかったんです。あなたの前で、本当の自分を出すことさえできませんでした。疲れたと感じるたびに、少しずつ気持ちが離れていったのかもしれません。あなたが私への気持ちを持て余して、優しくしたかと思えば冷たく突き放す。そんなことを繰り返すたびに、心がすり減っていったのかもしれません。あなたが友達に、私に本気になることなんてないって話しているのを聞いたとき。あなたが私を捨てると決めたあのとき。白川さんが悪いとわかっていながら、婚約者だからという理由だけで、彼女を無条件にかばったとき。そして、あなたが白川さんと婚約披露パーティーを楽しんでいる間、私は手術台に運ばれ、子どもを無理やり堕させた、あのとき……私の愛が少しずつ消えていき、無くなったんです」美空は自嘲するように笑った。「今、あなたが私を愛しているというのは、本当なのかもしれません。でも、それが何だというんですか?損得を天秤にかけて考えることが、あなたには染みついている。白川さんがいなくなったところで、今度は別の誰かが現れるだけ。だったら、いつかまた、あなたに捨てられるので
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