志保に返信した直後、拓海から個別メッセージが届いた。【今日リストラされたんだろ?ちょうど暇になったんだし、ついでにケーキを受け取ってきてくれないか?】私はそのメッセージを見つめたまま、しばらく動けなかった。私がリストラされたことは、ちゃんと見て知っていたのだ。それなのに、泣いていないかと心配することも、これからどうするつもりなのかと尋ねることもなかった。拓海にとって、私が仕事を失ったというのは、ただ暇な時間ができたというだけのことらしい。私はスマホを伏せてテーブルに置き、数分間ぼんやりと座っていた。それでも結局、靴を履き替えて家を出た。ケーキ屋に着くと、店員が注文番号を確認し、白いギフトボックスを差し出してきた。「モンブランですね。中に昇進祝いのメッセージカードも入っていますので、ご確認ください」私は箱を開けて中を確かめた。カードにはこう書かれていた。【柚葉へ。昇進おめでとう!これからもますますの活躍を祈ってるよ】私はカードを戻し、ケーキを持って川沿いのレストランへ向かった。個室の扉を開けると、柚葉が拓海の腕に絡みつきながら、楽しそうに話していた。「あ、菜月!来たんだ」柚葉は私に笑いかけると、立ち上がってケーキを受け取った。「わざわざありがとうね」「ううん、大丈夫」私はケーキを壁際に置いた。拓海はちらりとこちらを見ただけで、隣の椅子を引いた。「とりあえず飯にしよう。ケーキはあとで開ければいいし」私が席に着くと、店員が料理を運び始めた。食事の間、話題はずっと柚葉の新しい仕事のことばかりだった。新しいオフィスは26階にあって、窓から川が見えるのだと柚葉が話せば、拓海は遮光カーテンを買い替えたほうがいいんじゃないかと心配した。最近、肩や首が凝ってつらいと柚葉がこぼすと、井上健太(いのうえ けんた)が箸を置いた。「土曜日、一緒に整体に行こう。知り合いの店があるんだ」すると、小林航平(こばやし こうへい)は柚葉の皿からパクチーを取り除いた。「これは食べるなよ。パクチー食べると、いつも胃の調子が悪くなるだろ」三人は代わる代わる柚葉に声をかけ、至れり尽くせりの世話を焼いていた。私は箸を握ったまま、何度か話に入ろうとした。「私、今日ね……」そのとき、柚葉のスマホが鳴った。
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