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第8章

مؤلف: 雲月
四人は三日間、私の会社の前で待ち続けた。

私は初日、地下駐車場から出て正面玄関を避けて帰った。二日目には受付の人から、まだ彼らが外で待っていると聞かされたので、そのまま会議室に残り、最後の報告書を仕上げてから退社した。

そして三日目の午後、志保が私のそばにやってきた。

「いつまで避け続けるつもり?」

「そのうち諦めて帰るでしょ」

「でももう三日も待ってるんだよ」

私はパソコンを閉じた。

「……じゃあ、一度だけ会ってくる」

オフィスビルを出ると、四人は道端に立っていた。私の姿を見つけた拓海が、すぐに一歩前へ出た。

「菜月」

私は立ち止まった。

「何か用?」

柚葉が私を見つめていた。その目には疲れがにじんでいた。

「……ごめんなさい」

そう言うと、彼女の声はさらに小さくなった。

「パソコンのファイル、消したのは私なの。あのときは自分の報告会のことで頭がいっぱいで、菜月が翌日使うなんて考えてもいなかった。あとから、もう航空券まで買ってたって知って……」

「それはもうわかってる」

「ごめんって言っただけで、許してもらえるとは思ってない」

「じゃあ私にどうして
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  • 五人の輪に、私の居場所はなかった   第10章

    半年後、私が担当していたプロジェクトが正式に始動した。会議ではクライアントから名指しで高く評価され、会社の責任者からも新しいプロジェクトチームを正式に任されることになった。会議が終わると、志保が一枚の書類を差し出してきた。「おめでとうございます、伊藤チーフ!」私は書類を受け取り、思わず笑ってしまった。「そんなにかしこまった呼び方しないでよ」「ダメダメ。今や会社の重要プロジェクトを任される人なんだから」その夜、プロジェクトチームのみんなで食事に出かけた。美咲は事前に私のアレルギーや苦手なものを確認してくれていて、テーブルには私の好きなものばかりが用意されていた。誰かが写真を撮ろうと言い出したとき、私は無意識に端へ寄ろうとした。すると美咲が私の腕をつかんだ。「菜月さんは真ん中ですよ!」私はスマホの画面に映るみんなを見つめ、それから中央へと移動した。シャッターが切られた瞬間、私はみんなの真ん中に立っていた。全員がきちんとカメラを見ていた。家に帰ると、志保からプロジェクトの祝賀会で撮った写真が送られてきた。【この写真、SNSに載せてもいい?】私は少し考えてから返信した。【うん、載せていいよ】写真が投稿されてからも、私はしばらくスマホを開かなかった。その後、共通の同級生から、柚葉が以前の会社を辞め、別の街で働き始めたと聞いた。健太と航平はたまに会っているらしいけれど、拓海を誘うことはなくなったという。拓海はあの部屋を引き払っていた。退去の立ち会いに来た大家さんは、部屋の隅に置かれたミントの鉢植えを見て、持っていかなくていいのかと尋ねたそうだ。拓海はしばらくそれを見つめていたけれど、最後には首を横に振った。ミントの鉢植えは、そのまま窓辺に残された。あの四人のグループチャットはまだ残っていた。グループ名は一度も変更されず、アイコンも私が去る前に撮った集合写真のままだった。けれど、次の集まりについて話す人は、もう誰もいなかった。それからずいぶん経った頃、柚葉がグループを退会した。数日後には健太も抜けた。最後に航平が一言だけメッセージを残した。【みんな、そろそろ前に進もうぜ】そして航平もグループを去った。残されたのは拓海一人だけだった。拓海は誰もいなくなったチャット画面を見つめながら、

  • 五人の輪に、私の居場所はなかった   第9章

    私がはっきりと拒絶したあとも、彼らは何度か連絡を取ろうとしてきた。拓海は、私が置いていった古い本やアルバムを会社宛に送ってきた。志保に代わりに受け取ってもらい、箱を開けると、中には一通の手紙が入っていた。短い手紙だった。【お前のものだから返す。ごめん】私はアルバムだけ手元に残し、手紙はそのままごみ箱に捨てた。その後、健太も一度だけ会社に来た。中には入らず、大学時代に私が置いていった本を数冊、紙袋に入れて警備員に預けていったらしい。私は本を受け取り、受付の人に、もう何も届けなくていいと伝えてもらった。受付の人から、紙袋を送り返すかと聞かれたけれど、私は首を横に振った。「いえ、大丈夫です」本はオフィスに持ち帰り、その日の仕事が終わってから開いた。表紙をめくると、大学時代に自分で書いた名前が残っていた。文字は少し色あせていた。何ページかめくっていると、間から古い切符が一枚出てきた。初めて四人で郊外へ遊びに行ったときに買ったものだった。私はしばらく切符を眺めてから、それを本の間から抜き取った。本は会社の共有本棚に置くことにした。航平が姿を見せることは、それきりなかった。柚葉は共通の友人に電話をかけ、私が元気にしているか尋ねたそうだ。その話を聞いたとき、私はただ一言だけ返した。「心配しなくていいって伝えて」その頃、残された四人のグループチャットでは、たびたびメッセージが交わされていた。最初に口を開いたのは柚葉だった。【今日、みんなでご飯行かない?】誰からも返事はなかった。数日後、健太がメッセージを送った。【もうこのグループで菜月のことを話すのはやめよう。あいつは戻ってこないよ】拓海はすぐに返信した。【わかってる】その短い返事を見つめ、柚葉は思わず尋ねた。【まだ菜月とよりを戻すつもりなの?】長い沈黙のあと、ようやく拓海が返信した。【このまま終わりにはしたくない】するとそれまで黙っていた航平からメッセージが届いた。【これ以上菜月にどうしてほしいんだ?もうはっきり断られただろ】その一言を最後にグループチャットは完全に静まり返った。拓海はスマホを伏せ、テーブルに置いた。拓海が借りたあの部屋には、まだ私の古い持ち物がいくつか残されていた。部屋の隅に置かれたミントの鉢植えも

  • 五人の輪に、私の居場所はなかった   第8章

    四人は三日間、私の会社の前で待ち続けた。私は初日、地下駐車場から出て正面玄関を避けて帰った。二日目には受付の人から、まだ彼らが外で待っていると聞かされたので、そのまま会議室に残り、最後の報告書を仕上げてから退社した。そして三日目の午後、志保が私のそばにやってきた。「いつまで避け続けるつもり?」「そのうち諦めて帰るでしょ」「でももう三日も待ってるんだよ」私はパソコンを閉じた。「……じゃあ、一度だけ会ってくる」オフィスビルを出ると、四人は道端に立っていた。私の姿を見つけた拓海が、すぐに一歩前へ出た。「菜月」私は立ち止まった。「何か用?」柚葉が私を見つめていた。その目には疲れがにじんでいた。「……ごめんなさい」そう言うと、彼女の声はさらに小さくなった。「パソコンのファイル、消したのは私なの。あのときは自分の報告会のことで頭がいっぱいで、菜月が翌日使うなんて考えてもいなかった。あとから、もう航空券まで買ってたって知って……」「それはもうわかってる」「ごめんって言っただけで、許してもらえるとは思ってない」「じゃあ私にどうしてほしいの?」柚葉は何か言いかけたけれど、結局何も答えられなかった。今度は健太が前に出た。「俺も謝らなきゃいけない。昔、みんなで車に乗るとき、柚葉は車酔いするからって、いつも助手席を譲らせてたよな。ショッピングモールでお前を置いていったときも、俺はお前のことを、のろいって責めた」航平も小さな声で言った。「俺はいつも、お前が怒るのを面白がってた。何も言わなくなってからも、やっと気にしなくなったんだって勝手に思ってた」彼らが口にしたのは、どれも些細な出来事ばかりだった。だがそんな小さな出来事の積み重ねが、私をいつでも後回しにしていい存在へと変えていったのだ。彼らもようやく気づいたのだろう。本当につらいのは、一度忘れられることではない。忘れられた挙げ句、「それくらいわかってくれるよね」と言われることなのだと。拓海は三人の後ろに立っていた。「お前がいつも許してくれるから、それが当たり前になってた。今までずっとそばにいてくれたから、これからもいてくれると思い込んでたんだ」「だからいつも私を待たせてたんだね」「……ああ」「今になって、やっとわかったんだ」

  • 五人の輪に、私の居場所はなかった   第7章

    志保の会社に入ってから、私はまず二日間かけてプロジェクトの資料に目を通した。その案件はこれまでに担当者が二度も交代していた。資料は複数の部署に散らばり、進捗管理表の数字にも食い違いがあった。志保が資料を差し出した。「このプロジェクト、本当は別の人に任せる予定だったんだけど、クライアントがずっと納得してくれなくて。菜月、担当できそうか見てくれる?」私は最後のページまで目を通してから尋ねた。「来週もう一度プレゼンする予定なんだよね?」「そうだよ」「それならまだ間に合うかも」私は担当者の名前と業務内容を整理し直し、不足している情報を一つずつ洗い出した。午後には新しい進捗管理表をプロジェクトのグループチャットに送った。それを確認した中川美咲(なかがわ みさき)が尋ねてきた。「菜月さん、ここって私が前に見落としていた部分ですか?」「見落としじゃないよ。前のデータの参照元が変わっていただけ。美咲さんは仕入れ先に確認してくれる?私はクライアントとのスケジュール調整をするから」美咲はうなずき、仕事に戻っていった。プロジェクトで問題が起きれば、まず担当者を確認する。私が入社したばかりでも、みんな当たり前のように協力してくれた。失敗をあげつらったり、誰かが困るのを面白がったりする人はいない。ミスが起きたときも、担当者が経緯を記録し、私と一緒に解決策を考えてくれた。仕事が順調に進んでいるとき、こんなにも穏やかな気持ちでいられるのだと、私は初めて知った。一週間後、クライアントは改めて私たちのプレゼンを聞き、プロジェクトを引き続き任せてくれることになった。プレゼンが終わると、先方の責任者がわざわざ残って声をかけてくれた。「以前お願いした二社は、修正した資料を送ってくるだけで、問題点を一つずつ整理して説明してくれることはありませんでした。伊藤さん、今回のご提案はとても実用的でしたよ」私はパソコンを閉じ、丁寧にお礼を伝えた。会社に戻る車の中で、志保が尋ねてきた。「緊張した?」「最初はちょっとだけね」「全然そう見えなかったよ」「ちゃんと準備してきたって、自分でわかってたから」志保はちらりと私を見た。「前からそれくらい自分を信じられてたら、もっと早くあの会社を辞めてたかもしれないね」私は車窓を流れてい

  • 五人の輪に、私の居場所はなかった   第6章

    翌朝早く、拓海は私が以前勤めていた会社を訪れた。受付の女性は拓海の顔を覚えていたらしく、丁寧に答えた。「伊藤さんでしたら、昨日すでに退職手続きを済まされています」「新しい住所は聞いていませんか?」「申し訳ありませんが、そういった情報はお伝えできません」「転職先はどこですか?」受付の女性は再び首を横に振った。「伊藤さんからは何も伺っておりません」拓海はロビーに立ち尽くし、ほかに何を聞けばいいのかわからなくなった。そんな拓海に、顔を覚えていた警備員が声をかけた。「伊藤さんなら、昨日いくつか段ボールを抱えて出てこられましたよ。しばらくタクシーを待っていましたね。帰るときはずいぶん落ち着いた様子でした」「誰かに連絡していませんでしたか?」「そこまでは見ていませんね」健太は人事部へ向かい、航平はビルの下で私と同じチームだった社員を探して話を聞いた。だが得られた情報はどれも似たようなものだった。私はすでに退職手続きを終え、パソコンのデータも無事に復元していた。そして行き先を誰にも告げずに会社を去ったのだという。拓海は車に戻り、再びスマホを開いた。連絡先にはまだ私の名前が残っていたけれど、プロフィール画像は真っ白になっていた。拓海は、以前の私のことを思い出した。嫌なことがあると、私はまず自分の部屋にこもった。けれどしばらくすると出てきて、何事もなかったかのように夕食を作り始めた。たとえレストランの入口で置き去りにされても、グループチャットで「もう着いた?」と聞くくらいだった。でも今回は違う。グループチャットにはもう四人しか残っていなかった。それなのに誰も何を送ればいいのかわからなかった。最初にメッセージを送ったのは柚葉だった。【とりあえず、菜月を探したほうがいいんじゃないかな?】健太が返信した。【そうだな。探そう】航平は何も言わなかった。ずいぶん時間が経ってから、拓海がようやく一文を打ち込んだ。【まずは見つけて、それから謝ろう】その夜、四人は大学の近くにある、昔よく通っていた店を何軒か訪ねた。馴染みのラーメン屋の店主は、私のことを覚えていたが、事情を聞くと首を横に振った。「ずいぶん見てないねえ。昔はみんなでよく来てたじゃないか」誰も答えられなかった。ラーメン屋を出たところで、柚

  • 五人の輪に、私の居場所はなかった   第5章

    飛行機が離陸すると、私はスマホを機内モードに切り替えた。空港の待合ロビーにいる間に、拓海、柚葉、健太、航平の四人を全員ブロックし、長年参加していたグループチャットからも退会していた。あのグループに残っているのはもう四人だけ。きっとすぐに気づくだろう。だがその頃には私はもう、新しい街へと向かっていた。空港の出口では志保が待っていてくれた。スーツケースが一つしかないことに気づくと、彼女は私のパソコンバッグを受け取りながら尋ねた。「ほかの荷物は?」「とりあえず置いてきた」志保はちらりと私を見たけれど、それ以上は聞かなかった。「会社が短期滞在用のマンションを用意してくれてるよ。オフィスからも近いし、こっちの生活に慣れてから、ゆっくり自分の部屋を探せばいいから」私はうなずいた。車が走り出すと、私は窓ガラスに額をもたせかけた。この街も前に住んでいた街と大して変わらない。交差点では相変わらず渋滞が起きるし、夕方になれば空も少しずつ暗くなっていく。それでも、もうあの家に急いで帰る必要はないのだと思うと、不思議な気分だった。あの部屋はもともと拓海が借りたものだった。先に拓海が賃貸契約を結び、私はスーツケースを二つ持って引っ越してきた。それから少しずつ服や本、日用品が増え、いつの間にか私も、あそこを自分の家だと思うようになっていた。でも部屋の名義も賃貸契約も私の名前ではなかった。だから出ていくときは自分のものだけ持っていけばよかった。その夜、拓海が部屋に帰ると、柚葉はすでにリビングに座っていた。スマホを見ていた彼女は、玄関の開く音に顔を上げた。「菜月、帰ってきた?」「さあ、知らない」靴を履き替えようとした拓海は、玄関から女性用のスリッパが一足なくなっていることに気づいた。寝室に入ると、クローゼットの右半分はほとんど空っぽになっていた。机の上にあったパソコンも消えている。ベッドサイドの引き出しには、古いチケットの半券が数枚残っているだけだった。私がいつも使っていたマグカップはきれいに洗われ、キッチンのシンクの脇に伏せて置かれていた。ダイニングテーブルには一本の鍵が置いてあった。私が持っていた合鍵だ。拓海はそれを手に取り、長い間じっと見つめた。「……荷物、全部持っていったんだ」ほどなくして、

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