背筋を伸ばして立つ怜司の隣に、ほっそりとした若い女がいた。親しげに彼と腕を組んでいる。続いて、音声メッセージが届いた。「明さん、お兄さんの結婚の話、本当でしたよ。黒瀬家の食事会に奥さんまで連れてきてます。藤堂家のお嬢さんとは、よっぽど結婚したくなかったんですね」明の目つきが鋭くなった。鷹宮家と藤堂家は、ずっと前に縁談を取り決めていた。しかし、自分にはすでに想う相手がいる。藤堂家の令嬢と結婚する気など、あるはずがない。だからこそ、帰国したばかりの怜司にこの話を押しつけたのだ。病気を抱え、長年鷹宮家から遠ざけられていた兄なら、医薬の分野で有力な藤堂家との縁談に飛びつくと思っていた。それが、縁談を断ったうえに、あっという間に別の女と結婚した。写真を睨みつける明の眉間に、深いしわが寄る。ブルーグレーのドレスを着た女は、横顔しか写っていない。それなのに、白い首筋とすっきりした顎の線に夏帆の面影が重なり、胸がざわついた。明はとっさに返信を打った。【2人を正面から撮れ】そう送ったあとも、じっと写真を見つめていた。やがて、自嘲するように笑う。最近、夏帆に振り回されて、どうかしているのだろう。写真の女は仕立てのよいドレスを着ていて、首元の宝石も日の光を受けて眩しく輝いている。身につけたものだけで、少なくとも2,000万円はするはずだ。2,000円の服を買うのにも散々迷っていた夏帆が、こんな姿で怜司の隣に立っているはずがない。間もなくして、相手から音声メッセージが届いた。「無理ですよ。今日は写真を外に出すな、怜司さんの結婚も言いふらすなって、大旦那様からきつく言われてるんです。見つかったら、3年は黒瀬家の食事会に呼んでもらえなくなるんですよ。さっきのだって花壇の陰に隠れて撮ったんですから。もう怖くて撮れません」明はスマートフォンの縁を指でたたき、結局、短く返した。【もういい。2人の様子を見ておいてくれ】スマートフォンを机に放り出しても、苛立ちは収まらなかった。窓際に立ち、箱から煙草を抜いて火をつける。白い煙が広がり、明の不機嫌な顔をかすませた。怜司が結婚した以上、縁談の話はまた自分のところへ戻ってくる。何としても、藤堂家との縁談を白紙に戻さなければならない。……一方、黒瀬家の庭では、琴音に連れら
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