偽装結婚なのに、社長がキスをやめられない!

偽装結婚なのに、社長がキスをやめられない!

Oleh:  ひとくち餃子Baru saja diperbarui
Bahasa: Japanese
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記憶を失い、身寄りもお金もなかった恋人を、5年間支え続けた橘夏帆(たちばな かほ)。ところが彼は、名家・鷹宮家の跡取り、鷹宮明(たかみや あきら)だった。 とっくに記憶を取り戻していたにもかかわらず、彼は貧しいふりをして夏帆を欺き続け、別の女性を命の恩人だと言ってかばい、そのうえ、名家の令嬢との結婚話まで進んでいた。 居場所を失い追い詰められた夏帆は、育ての母の薬代を工面するため、ある契約結婚を引き受ける。 相手は黒瀬怜司(くろせ れいじ)。目が不自由で、気難しいうえに口も悪く、どれほど尽くしても心を開いてくれそうにない冷徹な男だった。 互いに必要なものを得るだけの取引。そのはずだったのに。 やがて怜司の目を治した夏帆は、いつしか彼の腕の中から抜け出せなくなっていた。 薄暗い玄関で腰を抱き寄せられ、逃げ道を塞ぐように扉へと追い詰められる。熱い口づけを交わしたあと、怜司が低くかすれた声で、耳元にささやいた。 「俺の目を治して、こんなに惚れさせておいて……今さら離れるなんて、許さないからな」 ようやく明は気づいた。自分を救ってくれたのは夏帆だったのに、別の女性ばかりかばい、彼女をほかの男のもとへ追いやってしまったのだ。 「夏帆、俺が悪かった。頼む、戻ってきてくれ」 目を潤ませて復縁を懇願する明の前で、怜司は夏帆を抱き寄せる腕に力を込め、冷ややかに笑った。 「夏帆はもう俺の妻だ。これからは夏帆さんと呼べ」

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Bab 1

第1話

「明さん、足……すごく張ってるわね」

わずかに開いたスイートルームの扉の隙間から、甘ったるい女の声が漏れ聞こえてきた。温かいハーブティーを載せたトレーを手に、橘夏帆(たちばな かほ)はぴたりと足を止める。

今夜、このホテルの最上階に迎えているのは、名だたるVIPばかりだった。中でもこの部屋の「鷹宮」という客は別格で、絶対に粗相のないようにと、フロア責任者から何度も念を押されていた。

ノックしようとした夏帆は、扉の隙間に目をやった途端、全身が凍りついた。

豪奢な黒革のソファの前。純白のドレスをまとった女が床に膝をつき、男の太ももにすがりつくように身を沈めている。見ているだけで頬が熱くなるほど、艶めかしい体勢だった。

男は気だるげにソファへ背を預けていた。ボタンを外した黒いシャツから白い鎖骨がのぞき、金縁の眼鏡の奥の瞳は余裕ありげに細められている。その姿には、人の上に立つことに慣れきった者の気品が漂っていた。

頭の中で、何かが弾けた。

見間違えるはずがない。どれほど高価な服を着て、一生縁のないような最上級のスイートルームに座っていようと、その横顔を夏帆が忘れるはずはなかった。

アキラ。夏帆の愛する恋人だった。

5年前、街外れの泥濘んだ側溝で、血まみれになって倒れていた彼を背負って帰り、3日3晩、寝ずに看病して命をつなぎとめたのは夏帆だった。

記憶を失い、帰るあてもなかった彼は、人懐っこい大型犬のように夏帆になつき、以来5年間、一緒に暮らしてきた。昨夜だって、夏帆を抱きしめて「俺が稼げるようになったら、絶対に楽させるからな」と言ってくれたばかりだ。

それなのに今、1泊何十万円もする部屋で、別の女を脚にもたれかからせている。

「さっき足をくじいたとき、無理しないでって言ったのに。まだ痛い?もう少しほぐしてあげるね」

相沢美咲(あいざわ みさき)が男を見上げ、スラックス越しに指を滑らせた。けれど、耳の奥で鳴り響く雑音にかき消され、夏帆には2人の会話がほとんど聞き取れなかった。体が冷たくなって、トレーを持つ手の震えが止まらなかった。

ガシャンッ!

トレーが手を滑り、大理石の床に大きな音を立ててぶつかった。カップが砕け、熱いお茶が飛び散ると、後ろから談笑しながら歩いてきた若い男たちが足元の惨状に顔をしかめた。

「おい、何やってんだよ!気をつけろよ!」

怒声に我に返った夏帆が顔を上げると、部屋から足音が近づいてきた。片手をポケットに突っ込んだ男が、何事もなかったような冷淡な顔で姿を現す。だが、夏帆の姿を認めた瞬間、その目が大きく見開かれ、足が止まった。

夏帆は彼の顔を見つめ、動揺や申し訳なさの欠片でも見つけようとした。ほんの少しでも、後ろめたさを感じていてほしかった。けれど、一瞬の驚きが消えたあと、眼鏡の奥に残ったのは、秘密を知られた苛立ちと、邪魔をされた不快感だけだった。

ドレスの裾を持ち上げて追ってきた美咲は、夏帆を見た途端、得意げな笑みを浮かべた。この男は自分のものだと、見せつけるように。

「鷹宮さん、こんな所にいらしたんですか」

廊下にいた男が、急に愛想よく笑って近づいていく。

「さっき藤堂家から連絡があって、婚約パーティーの進行を事前に確認したいそうですよ。こんな所でくつろいでたんですね」

隣の男も美咲を見て、意味ありげに笑う。

「相沢さんも一緒だったんですね。もうすぐ藤堂家のお嬢さんと婚約するってのに、やっぱり命の恩人は特別なんだな。お相手が知ったらヤキモチ焼きますよ」

鷹宮。婚約。命の恩人。

何気なく交わされる言葉が、ひとつひとつ夏帆の胸に突き刺さった。

彼は、何も持たない貧しい青年などではなく、名家の御曹司、鷹宮明(たかみや あきら)だった。しかも、家柄の釣り合う藤堂家の令嬢と間もなく婚約するという。夏帆だけが、何も知らずにいたのだ。

「相沢さんの施術のおかげですね。でなければ、明さんはいまだ記憶も戻らず、家業を継ぐどころじゃなかったでしょう」

「相沢さんのおかげで、すべて思い出せたんですよね?本当に、命の恩人ですね」

別の男まで調子を合わせて持ち上げると、美咲は少しうつむき、照れたように笑った。

「そんな、大したことはしてません。明さんはご家族と離れて、ずっと大変だったんですから。少しでも力になれたなら、それだけでうれしいです」

そして、初めて床の破片に気づいたように声を上げた。

「あら、お茶もまともに運べないの?明さんは今夜お酒を飲んでるんだから、早く持ってきてあげて。また胃が痛くなったらどうするの」

夏帆は怒りに震えながらも、美咲には目もくれず、明だけを見つめていた。

美咲が命の恩人なら、自分は何なのだ。

5年前、血まみれで倒れていた彼を背負って帰り、傷の手当てをして命を救ったのは夏帆だ。頭痛や古傷の痛みに苦しむ夜も、薬を用意し、鍼治療を施して、夜通しそばで看病してきた。

それなのに、誰もが美咲を命の恩人だと言い、明も否定しない。夏帆が恋人だと明かすこともなく、ただ黙っていた。何か事情があるのかもしれない。そう信じようとしていた夏帆の最後の期待も、彼の沈黙に打ち砕かれた。

そのとき、別のスタッフがハーブティーを淹れ直して運んできた。額に汗を浮かべた責任者は、そのトレーを取り上げるなり、夏帆の手へ無理やり押しつけた。

「何ぼさっとしてるの!早くお出しして、謝りなさい!」

足のすくんでいる夏帆の前へ、美咲が優雅な笑みを浮かべて進み出た。

「私がやるわ」

美咲の肘が、何気ない動きを装ってトレーの縁にぶつかった。傾いたカップからお茶の大半がこぼれ、美咲の純白のドレスに勢いよくかかる。

「きゃっ!」

悲鳴を上げて後ずさった美咲は、白い裾に広がる茶色い染みを見て、今にも泣きだしそうに目を潤ませた。

「私の、ドレスが……っ」

夏帆はトレーを支え、残ったお茶をこぼさないようにしながら、その三文芝居を冷めた目で見ていた。だが、周囲から浴びせられたのは、夏帆を責める言葉ばかりだった。

「おい、わざとやったんじゃないのか!」

「相沢さんにこんなことして、ただで済むと思ってるのか!」

「鷹宮様、相沢様、大変申し訳ございません!新人で不慣れなもので……すぐに謝罪させますので!」

青ざめた責任者が夏帆の肩をつかみ、頭を下げさせようと力を込めた。

美咲は目元の涙を拭い、夏帆を見下ろして冷たく笑った。

「謝って済むと思ってるの?これ、明さんが私のために特注してくれたドレスなのよ。1,600万円もするのに、あなたに弁償できるの?」

1,600万円。夏帆が3つの仕事を掛け持ちしても、ひと月に貯められるのは、その100分の1程度だった。

「早く土下座しなさい。みんなに迷惑をかけるつもり?」

責任者が人目を盗んで夏帆を強くつねり、押し殺した声で脅した。

それでも夏帆は屈さず、充血した目を真っ直ぐに明へ向けていた。5年もの間、同じ屋根の下で生きてきた彼が、自分がこんな理不尽に踏みにじられるのを黙って見過ごすはずがない。

けれど、明は何の感情も見せずに夏帆を見下ろしていた。金縁の眼鏡越しに夏帆を見るその目は、まるで見知らぬ他人に向けるように冷たかった。

「怒るなよ。また新しいのを買ってやるから」

美咲に顔を向け、優しい声でそう言った明に、夏帆のまつげが震えた。自分にはとても払えない金額なのに、彼は顔色ひとつ変えず、別の女をなだめるために、あっさり買い直すと約束する。その口から、今度は冷たい言葉が続いた。

「ただ、悪いことをしたなら謝るべきだ」

夏帆の胸の奥で、何かがぷつりと切れた。

母は今も入院していて、生きるためには治療を続けなければならない。悔しくても、この仕事を失うわけにはいかなかった。

血がにじむほど下唇を噛み締め、夏帆は明を見つめた。目の前に立つ冷酷な男と、記憶の中で優しく笑っていたアキラ。その2人が全くの別人なのだと、自分に言い聞かせるように。

そして、膝は真っ直ぐに伸ばしたまま、ゆっくりと腰を折った。

「相沢様、申し訳ありません。私の持っていたお茶でドレスを汚してしまったことは、お詫びします」

再び背筋を伸ばすと、一切の怯えを見せずに美咲を睨み据えた。

「ですが、ぶつかってきたのはそちらです。私がわざとかけたわけではありません」

辺りが静まり返る中、美咲の得意げな表情が一瞬こわばった。だが、すぐに嘲るような笑みを浮かべる。

「まだ言い訳するの?自分の立場ってものがわかってないみたいね」

一歩も引こうとしない夏帆を見て、明の端正な眉がわずかに寄った。美咲がすかさずその腕にすがりつく。

「明さん、私もうこの人の顔見たくない。わざとかけたくせに、私のせいにするなんて酷いわ」

少しの沈黙のあと、明は夏帆から目をそらした。

「警備員、こいつをつまみ出せ」

すぐに2人の警備員が近づき、夏帆の両腕を乱暴につかんだ。抵抗も、許しを請うこともせず、夏帆はただ背筋を伸ばしたまま、エレベーターへ連れていかれた。

扉が閉まる間際、夏帆は一度だけ振り返った。きらめくシャンデリアの下で、明は冷淡な横顔を見せ、その隣には美咲が親しげに寄り添っている。あの2人こそが、同じ世界に生きる者同士なのだと思えた。

扉が閉まると、夏帆は冷たい壁に背を預け、かすかに笑った。その途端、涙がとめどなくあふれ、頬を伝い落ちた。

アキラは、もういない。

記憶を取り戻し、鷹宮家の御曹司に戻ったあの日、夏帆が愛したアキラは死んでしまったのだ。

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第1話
「明さん、足……すごく張ってるわね」わずかに開いたスイートルームの扉の隙間から、甘ったるい女の声が漏れ聞こえてきた。温かいハーブティーを載せたトレーを手に、橘夏帆(たちばな かほ)はぴたりと足を止める。今夜、このホテルの最上階に迎えているのは、名だたるVIPばかりだった。中でもこの部屋の「鷹宮」という客は別格で、絶対に粗相のないようにと、フロア責任者から何度も念を押されていた。ノックしようとした夏帆は、扉の隙間に目をやった途端、全身が凍りついた。豪奢な黒革のソファの前。純白のドレスをまとった女が床に膝をつき、男の太ももにすがりつくように身を沈めている。見ているだけで頬が熱くなるほど、艶めかしい体勢だった。男は気だるげにソファへ背を預けていた。ボタンを外した黒いシャツから白い鎖骨がのぞき、金縁の眼鏡の奥の瞳は余裕ありげに細められている。その姿には、人の上に立つことに慣れきった者の気品が漂っていた。頭の中で、何かが弾けた。見間違えるはずがない。どれほど高価な服を着て、一生縁のないような最上級のスイートルームに座っていようと、その横顔を夏帆が忘れるはずはなかった。アキラ。夏帆の愛する恋人だった。5年前、街外れの泥濘んだ側溝で、血まみれになって倒れていた彼を背負って帰り、3日3晩、寝ずに看病して命をつなぎとめたのは夏帆だった。記憶を失い、帰るあてもなかった彼は、人懐っこい大型犬のように夏帆になつき、以来5年間、一緒に暮らしてきた。昨夜だって、夏帆を抱きしめて「俺が稼げるようになったら、絶対に楽させるからな」と言ってくれたばかりだ。それなのに今、1泊何十万円もする部屋で、別の女を脚にもたれかからせている。「さっき足をくじいたとき、無理しないでって言ったのに。まだ痛い?もう少しほぐしてあげるね」相沢美咲(あいざわ みさき)が男を見上げ、スラックス越しに指を滑らせた。けれど、耳の奥で鳴り響く雑音にかき消され、夏帆には2人の会話がほとんど聞き取れなかった。体が冷たくなって、トレーを持つ手の震えが止まらなかった。ガシャンッ!トレーが手を滑り、大理石の床に大きな音を立ててぶつかった。カップが砕け、熱いお茶が飛び散ると、後ろから談笑しながら歩いてきた若い男たちが足元の惨状に顔をしかめた。「おい、何やってんだよ!気をつけろよ!
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第2話
古い街並みの一角にあるアパートへ戻ったときには、もう夜も更けていた。狭い玄関で、夏帆は足元の灰色のスリッパを見下ろした。履き古して形の崩れた、アキラのものだ。その裏には、昼間、床を拭いたときの水の跡がまだ残っていた。洗面台には青とピンクのプラスチックコップが並び、ベッドの脇には、生活費を切り詰めて彼のために買った電気シェーバーが置かれていた。ハンガーには、何度も洗って色褪せた上着が掛かっている。目に映るものすべてが、ここでアキラと暮らした日々を思い出させた。けれど、もうあの頃には戻れない。スマートフォンが震えた。夏帆がぼんやりしたまま取り出して画面を見ると、明からのメッセージが届いていた。【今夜は大事な客の接待で、帰れないかもしれない。先に寝ててくれ。明日、ちゃんと説明する】大事な客?美咲か、それとも婚約相手の藤堂家の令嬢か。もう嘘はばれているのに、まだ平気な顔で騙し続けるつもりらしい。夏帆はかすむ目をこすり、ひと言だけ返した。【別れましょう】……翌朝、夏帆はいつも通りに仕事へ向かった。だが、待っていたのは思いもよらない仕打ちだった。午前中、パート先の漢方薬局へ行くと、店主に「もう来なくていい」と入り口で追い返された。昼には飲食店でも、働いた分の給料を渡され、「ほかの仕事を探してくれ」と告げられる。午後、急いでオフィスビルへ駆けつけると、今度は清掃責任者の長谷川真紀(はせがわ まき)がシフト表から夏帆の名前を消していた。たった1日で、3つの仕事をすべて失ってしまった。夏帆はたまらず真紀の腕をつかんだ。「長谷川さん、正直に教えてください。誰かが裏で手を回してるんですか?」真紀は周囲をうかがってから、声を落とした。「夏帆ちゃん、私にはどうにもできないの。上からの指示なのよ。昨夜、鷹宮さんを怒らせたんでしょう?あなたを雇ったら鷹宮家を敵に回すことになるって、もうあちこちに話が回ってるわ。うちみたいな小さな会社じゃ、とても逆らえないの」自分まで巻き込まれるのを恐れるように、真紀は足早に立ち去った。ビルの前に取り残された夏帆は、体の芯まで冷えきっていくようだった。散々騙して裏切っておきながら、今度は仕事まで奪うというのか。怒りが収まらないうちに、スマートフォンが激しく鳴り出した。母が入院してい
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第3話
その問いかけに、怜司が再び夏帆を見た。値踏みするような、冷たく鋭い目だった。夏帆は顔が熱くなったが、恥ずかしがっている場合ではない。病院では母が薬を待っている。今は何より、お金が必要だった。楓は怜司の様子をうかがったが、口を開く気配がないので、事務的に説明を続けた。「報酬の一部は、入籍後すぐにお支払いします。残りは3年後、契約を終えて円満に離婚が成立した時点でお渡しします」そう言って、楓は人さし指を立てた。報酬は1億円という意味だった。だが、そんな大金に縁のない夏帆は、ぱっと目を輝かせて声を上げた。「1,000万円ですか?」楓は指を立てたまま固まり、怜司もカップを持ち上げかけて手を止めた。2人とも何も言わないので、夏帆は不安になった。高く言いすぎたのだろうか。「1,000万円が大金なのはわかっています。でも、3年間も奥さんのふりをするんですよね。いつ呼ばれても駆けつけて、人前では話を合わせて、身の回りのお世話もする。そのうえ、私には離婚歴が残るんです。離婚したあと、周りから何を言われるかわかりません。その気苦労や3年分の働きを考えたら、1,000万円でも高くないと思います」楓は口元をひきつらせ、笑いをこらえながら怜司の方を見た。怜司はゆっくりとカップを置き、抑揚のない声で尋ねた。「3年で、たった1,000万でいいのか」夏帆はきょとんとした。もしかして、少なく言いすぎたのだろうか。唾をのみ、恐る恐る聞き返した。「まさか……1億円、ですか?」言ったそばから、夏帆は心の中で首を振った。あり得ない。偽装結婚の相手に1億円も払うなど、頭がおかしいか、お金が余って使い道に困っているとしか思えない。けれど、1億円じゃないなら、まさか100万円?3年で100万円なら、普通にアルバイトを掛け持ちした方がまだ稼げる。夏帆は相手が気を変える前にと、きっぱり言った。「1,000万円です。これ以上は下げられません。黒瀬さん、私、本当に今すぐお金が必要なんです。今日入籍して、すぐに振り込んでいただけるなら、条件はすべて受け入れます」楓はとうとう我慢できず、小声で口を挟んだ。「橘様、こちらが考えていた金額は――」「楓」怜司が短く制し、淡々と告げた。「いいだろう。1,000万だ」夏帆はほっと息をついた。相手
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第4話
路線バスに乗り、楓から送られた住所を頼りに高級レジデンス「リバーテラス」へ到着したのは、午前8時40分ちょうどだった。門の前には、制服をきちんと着た警備員が背筋を伸ばして立っていた。夏帆がスーツケースを引いて近づくと呼び止められたが、あらかじめ話は通っていたらしい。警備員は夏帆の身元を確認すると、当面は自由に出入りできるよう登録してくれた。夏帆は礼を言って中へ入った。木々が茂る広い敷地は、静かな庭園のようだった。送られてきた地図を見ながらたどり着いた3号棟は6階建てで、各階に2戸しかない、ゆったりとした造りになっている。専用エレベーターで3階へ上がると、扉の先には広々としたホールがあった。重厚な玄関ドアの前に立つと、夏帆の手のひらにじわりと汗がにじんだ。こんな一等地の超高級マンションに足を踏み入れるのは、生まれて初めてだった。ましてや、自分がそこに住むことになるなど夢にも思わなかった。深く息を吸ってドアをノックすると、すぐに内側から開いた。スーツ姿の楓が、声を潜めて迎え入れる。「橘様、会長はまだお休みですので、静かにお願いします」時計を見ると、もう9時近い。こんな時間までまだ寝ているらしい。余計な質問は控え、夏帆は素直にうなずいた。「はい、わかりました」楓に案内され、部屋の中を簡単に見て回る。300平米を超える室内はモノトーンで統一され、きれいに整っていたが、生活感はほとんどなかった。リビングの壁一面の窓からは、敷地の中央にある庭園が見渡せる。ティールームやダイニング、キッチンのほか、来客用の応接スペースも備わっていた。主寝室は一番奥にあり、その隣が治療用の部屋で、書斎には別に鍵が掛かっていた。楓はそれらの扉を指し示し、厳しい口調で念を押した。「会長の寝室と治療用の部屋、それからこちらの書斎には、許可なく入らないでください。普段は会長の様子に気を配り、呼ばれたらすぐに対応してください」「わかりました」夏帆がうなずいたところで、楓のスマートフォンが鳴った。電話に出た楓は、ほどなくして帰っていった。夏帆は書斎の隣にあるゲストルームへスーツケースを運び入れ、わずかな荷物を片づけ始めた。途中、何度かゲストルームから出たが、怜司の寝室の扉は閉まったままで、中からは物音ひとつ聞こえなかった。片づけを終える頃には昼近くに
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第5話
ダイニングが一瞬、静まり返った。夏帆は耳まで熱くなりながら、こちらを冷ややかに見ている怜司と目を合わせた。「誤解しないでください。黒瀬さんと結婚するために別れたんじゃありません。このお話をいただく前に、もう終わっていたんです……信じてもらえますか?」緊張しながら彼の表情をうかがう。働き始めた初日から、お金のために恋人を捨てた女だと思われたくなかった。怜司は表情ひとつ変えず、器の中のうどんを箸で軽くほぐした。「続けろ」「え?」意味がわからずきょとんとしていると、怜司の眉がわずかに寄った。言いたいことがすぐに通じず、苛立ったらしい。「さっきの続きだ。聞かせろ」声は決して大きくないのに、逆らうことを許さない響きがあった。夏帆はごくりと唾をのむ。怒ったときの柚葉がどれほど口が悪いかは、誰よりよく知っていた。これ以上、過激なことを言っていませんようにと祈る思いで、もう一度再生ボタンを押した。『あいつ、夏帆と別れたばっかりで、もう別の女とデート?ほんと腹立つ!さっき「夏帆に言うからね」って言ってやったら、ただの接待なのに信じてもらえないんだって。毎回説明するのに疲れたから、今回は何も言いたくないってさ。なのに、私がその場を離れた途端、連れの女が「デートなのに、なんで夏帆には接待って言うの?」だって!別れて大正解だよ、夏帆。やっぱり顔がいい男って、浮気者ばっかり!』再生が終わると、ダイニングには気まずい沈黙が落ちた。その静けさを破るように再びスマートフォンが震え、新しいボイスメッセージが届く。おそるおそる向かいをうかがうと、怜司もこちらを見ていた。冷ややかな表情なのに、どこか面白がっているようにも見える。続きも聞かせろと言わんばかりの目に、夏帆は観念して次のメッセージを再生した。『夏帆、あんなに長く付き合ってたんだもん。つらいよね。今日は早めに上がるから、夜そっちに行くね』夏帆は録音ボタンを押すと、落ち着いた声で返した。「もう平気だから。来なくて大丈夫だよ」強がりではなかった。5年間も自分を騙し続けた男と別れて、今さら泣く理由などない。ただ、あんな男を本気で愛し、必死に稼いだお金まで渡してきたことが悔しかった。今は目の前の仕事をきちんとこなし、約束の報酬を受け取りたい。夏帆が望むのは、それだけだった。怜司
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第6話
大きな手が夏帆の腕をつかみ、倒れかけた体を支えた。薄い服越しにも、その手の熱さと力強さが伝わってくる。「こんなところで何をしている」怜司は眉を寄せ、夏帆を見下ろしていた。濡れた黒髪が額に張りつき、濃いグレーのタンクトップから、広い肩と引き締まった体つきが際立っている。汗ばんだその姿には、大人の色気が漂っていた。「黒瀬さん」夏帆はどうにか体勢を立て直すと、水とタオルを差し出した。「運動のあとですし、お水とタオルをどうぞ。汗を拭かないと、体が冷えてしまいますよ」機嫌をうかがいながら、おずおずと怜司を見上げる。怜司は差し出されたものに目を落とし、緊張で少し赤くなった夏帆の耳元へ視線を移した。「ずいぶん気が利くな」まだ少し息が荒く、声もかすれている。「お金をいただいてるんですから、これくらい当然です」夏帆は目を細め、明るく笑った。怜司は少し夏帆を見つめてから、水とタオルを受け取った。「次からは、ここで待たなくていい」それだけ言って背を向け、大股で主寝室へ歩いていく。その背中が廊下の奥へ消えると、夏帆はほっと息を吐いた。これで初日は、どうにか無事に乗り切れたらしい。……自分の部屋へ戻ると、ちょうど電話が鳴った。「夏帆!大家さんに聞いたんだけど、引っ越したの?今、どこにいるの?」柚葉はいつもの明るい調子だったが、心配してくれているのが伝わり、夏帆はうれしかった。ただ、契約のことは口外できないため、住んでいる場所や結婚については話せない。「住み込みの仕事が見つかったの。食事も出るし、条件もいいから、さっそく引っ越してきたんだ」「へえ、そんなに条件いいんだ!何の仕事?今度、遊びに行ってもいい?」「今はちょっと難しいかな。もう少し落ち着いたら、私から会いに行くね」「そっか。元気ならいいんだけど」柚葉はため息をつき、少し声を落とした。「それで、アキラとは何があったの?昼間は話が急すぎて、よくわからなかったんだけど」夏帆はスマートフォンを握りしめた。天井を見上げてひとつ深呼吸をすると、一昨日、ホテルのスイートルームの前で何があったのか、すべて打ち明けた。少しの間、電話の向こうが静まり返り、やがて柚葉が大声を上げた。「うそ、あのアキラが鷹宮家の御曹司!?夏帆、そんな大金持ちを助けてた
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第7話
怜司は足を止めた。もう1週間、ろくに眠れていない。頭の中を無数の針で刺されるような片頭痛が続き、気が狂いそうだった。苛立ちも限界に達している。怜司は一度目を閉じ、結局、任せてみることにした。「やってみろ」引き返してリビングへ行き、カップをローテーブルに置くと、ゆったりとした革張りのソファに深く腰を下ろした。「はい、すぐ準備しますね」夏帆は顔をほころばせ、小走りで洗面所へ向かった。ぬるま湯で丁寧に手を洗い、両手をこすり合わせて十分に温めてから、ソファの後ろへ戻った。怜司は背もたれに頭を預けて目を閉じていたが、まだ全身に力が入っていた。夏帆は深く息を吸い、ゆっくりと両手を伸ばした。ほのかに薬草の香りがする温かい指先がこめかみに触れると、怜司の体がわずかにこわばった。夏帆は指の腹で優しく円を描くように、もみほぐしていった。「黒瀬さん、力を抜いてください。私に合わせて、息を吐いて……吸って……」落ち着かせるように穏やかに声をかけながら、こめかみから頭頂部へと指を移し、ツボを捉えてほどよい力で繰り返し押していく。指先の温もりがじんわりと伝わり、怜司の頭を刺すような痛みも少しずつ和らいでいった。夏帆は続いて、首の付け根や耳の後ろもほぐす。血の巡りをよくし、気持ちを落ち着かせて眠りを促す、家に代々伝わるやり方だ。怜司の肩から少しずつ力が抜け、呼吸もゆっくりと深くなっていく。それでも夏帆は手を止めず、ソファの後ろに立ったまま、根気よくほぐし続けた。1時間以上も続けるうちに、腕は持ち上げるのもつらいほど痛くなり、額にも汗がにじんでいた。そのとき、静かな寝息が聞こえてきた。怜司は頭を少し横に傾け、すっかり眠り込んでいる。いつもは冷酷にさえ見える顔が、今は無防備に和らいでいた。夏帆はほっと息をつき、起こさないように静かに手を離した。だるくなった手首をさすってからゲストルームへ薄手の毛布を取りに行き、怜司に優しく掛けた。時計を見ると、もう7時近い。食材を買いに行かなければ。夏帆はバッグを手に取り、静かに部屋を出た。リバーテラスは、街で最もにぎわうビジネス街の中心にある。周囲には高層オフィスビルが立ち並んでいるが、敷地内は高い石塀と豊かな緑に囲まれ、外の騒がしさが届かない静かな空間だった。まずは敷地内の高級スーパーへ
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第8話
その日の午後、夏帆は印刷した履歴書を持ち、聖ルミナス国際病院の東洋医学センターを訪れた。センター長の周防鶴彦(すおう つるひこ)はデスクに向かい、老眼鏡を掛けてその書類に目を通していた。目を引く学歴も、資格の記載もない。その代わり、これまでの治療記録や症例についての考察が、数ページにわたってびっしりとまとめられている。読み進めるにつれ、鶴彦は目を輝かせた。「ここにある不眠症や片頭痛は、どれも治りにくい症例だね。薬は君が処方したのかい?」「はい」夏帆は背筋を伸ばし、落ち着いて答えた。「こちらの重い顔面麻痺も、わずか半月の鍼治療で治したのかい?」鶴彦の声には、驚きが混じっていた。「はい。祖父に教わった、家に伝わる方法で鍼を打ちました」鶴彦は履歴書を閉じ、老眼鏡を外した。見事な内容だけに、資格がないことが惜しまれた。「これだけの患者さんを治してきたのに、どうしてまだ資格を取っていないんだい?」夏帆は目を伏せた。祖父が亡くなってから、かつて祖父と対立していた人物に何かにつけて邪魔されてきた。知識も腕もあるのに、どうしても資格だけは取れなかったのだ。「少し事情がありまして」一拍置いて、夏帆は真剣に続けた。「応募したのは施術補助の仕事です。1人で患者さんを診ることはありませんし、病院の決まりも必ず守ります」これほどの腕と経験があるのに、補助だけさせるのはもったいない。鶴彦はそう思ったが、資格がない以上、規則を曲げるわけにはいかなかった。「わかった。結果は後日連絡するから、待っていてくれるかな」鶴彦が履歴書を引き出しにしまうと、夏帆は頭を下げた。「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」部屋を出て廊下を歩いていると、少し先の診察室から、聞き覚えのある甘い声が響いてきた。「今夜、彼が皆さんにディナーをごちそうしたいって言ってて。ぜひ来てくださいね」夏帆は足を止め、半開きの扉に目を向けた。白衣姿の美咲を、若い医師や看護師たちが囲んでいた。「相沢先生、ほんと幸せですね!」「彼氏、かっこよくてお金持ちで、しかも先生に一途なんでしょう?」「通勤が楽になるようにって、病院の隣にマンションを買ってくれたんですか?あそこ、1坪で何百万円もするところですよね?」美咲はうれしそうに笑い、甘
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第9話
美咲は一歩近づき、挑発するように言った。「あなたが何年かけても治せなかったのに、私が鍼を数本打っただけで、明さん、全部思い出したのよ。仕事も男も、私に勝てると思ってるの?そんなの無理に決まってるでしょ」夏帆は頭を殴られたような衝撃を受けた。数か月前、アキラと一緒に医療系の合同採用説明会へ行ったときのことがよみがえる。別のアルバイトへ急いでいた夏帆は、彼に履歴書を預け、各ブースに提出してもらうよう頼んだ。後日、聖ルミナス国際病院から面接の案内が届いた。採用枠はわずか1人だけだったが、夏帆は自分ならきっと受かると思っていた。けれどアキラは、夏帆の手を取って優しく言ったのだ。「夏帆、あの病院って街の反対側だろ?ここからだとバスで往復3時間もかかるんだよ。それなら近くで働いたほうが稼げるって。今回はやめておこうよ」毎日3時間も通勤に費やすのは、体力的にも厳しい。夏帆は彼の言葉に納得し、面接を辞退した。けれど、彼は夏帆の通勤を心配して引き止めたわけではなかった。たった1つの採用枠を、美咲に譲らせたかったのだ。夏帆なら苦労に耐えられても、美咲には無理だから。病院の近くは家賃が高く、夏帆には部屋を借りる余裕さえなかった。それなのに彼は、美咲が少しでも楽に通えるよう、ためらいもなく病院の隣に高級マンションを買い与えていた。鈍い刃で胸の奥を何度も切られるようで、息もできないほど苦しかった。それでも夏帆は、拳を固く握りしめて涙をこらえた。美咲を見据え、皮肉な笑みを浮かべる。「鍼を数本打っただけで記憶が戻るなんて、すごいわね」今度は夏帆が一歩踏み込んだ。「どんな名医も顔負けじゃない。いったい誰に教わったの?」美咲の顔色が変わった。頭のけがで失った記憶が、鍼を数本打っただけで戻るわけがない。東洋医学を学んだ美咲にも、それくらいはわかっているはずだ。夏帆が何年も毎日のように治療を続けたことで、明はすでに回復に向かっていた。美咲はたまたま記憶が戻るタイミングで鍼を打ち、その手柄を横取りしたにすぎない。「あなた……!」痛いところを突かれ、美咲が声を荒らげた。「資格も取れないくせに、よくそんな偉そうな口が利けるわね!」大きく息を吸うと、美咲は再び見下すような笑みを浮かべた。「あなたが何を言ったって、明さんに
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第10話
夏帆は自嘲するように口元をゆがめ、ベンチに手をついて立ち上がった。そのまま立ち去ろうとすると、明に強く手首をつかまれた。「夏帆」振りほどこうとしてもびくともせず、夏帆は冷たい目で彼を見返した。「放して」明は眉を寄せた。普段は穏やかな目の奥に、苛立ちがにじんでいる。「今日、聖ルミナスへ行ったのか。もう美咲のところへ行くな」低い声で釘を刺され、夏帆は耳を疑った。抑え込んできた怒りが、一気に噴き上がる。乾いた音が、公園の静けさを破った。思いきり彼の頬を張ると、自分の手のひらまでじんとしびれた。「最低……!」彼を睨みつけると、こらえていた涙がとうとうあふれ出した。明は打たれた勢いで顔を横に向けた。白い肌に、5本の指の跡がくっきりと浮かび上がる。痛む頬を内側から舌で押し、怒るどころか薄く笑ったが、その目は少しも笑っていなかった。「お前なら俺のことをわかってくれると思っていたのに。こんな騒ぎを起こして、どうなるかわかってるのか?」夏帆は信じられないものを見るように彼を見つめた。胃の奥から吐き気がこみ上げてくる。「鷹宮様って呼べばいい?それとも、アキラ?5年も私を騙しておいて、それでもあなたの事情を察して、何もかも許せっていうの?」明は苛立たしげにネクタイを緩めた。「素性を隠してたくらいで、そこまで怒るのか」「素性を隠してたくらい?」夏帆は力なく笑ったが、涙は止まらず、頬を伝い続けた。正体を隠して騙し続けたことも、5年間の献身を踏みにじったことも、彼に言わせれば「そのくらい」のことなのだ。「嫌な思いをしたのはわかってる。ホテルでのことは、俺も説明しなきゃいけないと思ってる」明は眉間にしわを寄せたまま、いっそう声を低くした。「だからって、美咲に当たるな。あいつは何も知らないんだ。お前に責められたら、耐えられない」夏帆は呆然と彼を見た。あまりにも理不尽だった。美咲が耐えられないなら、自分はどうなるのだろう。人前で謝罪を迫られ、警備員にホテルからつまみ出されたとき、彼は自分のつらさを少しでも考えてくれただろうか。1日で3つの仕事を失い、母の薬代すら払えなくなったときも、どんな思いをするか想像してくれたことはあっただろうか。夏帆は、つかまれた手首をゆっくりと引き抜いた。「じゃあ
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