指輪交換に差しかかり、私が指輪を取り出したそのときだった。颯介の幼なじみである美緒が、純白のウェディングドレスを着て式場に飛び込んできた。「颯介!迎えに来たよ!私と結婚して!」目を真っ赤に腫らし、髪も乱れ、まるで何かの災難から逃げてきたかのような姿だった。数百人の招待客が一斉に美緒を振り返る。颯介は何のためらいもなく私の手を振りほどくと、足早にステージの端へと向かう。「美緒、どうしてここに?」美緒はステージに上がると、涙を浮かべて颯介を見つめた。「颯介、私のために結婚式を挙げてくれるって約束したよね?」颯介は美緒を痛ましそうに見つめ、花嫁である私のことなど眼中にない様子だった。親族席に座っていた両親は、怒りで顔をこわばらせていた。母は胸元を押さえ、その手が小刻みに震えている。颯介は美緒の手を引き、私の前まで連れてきた。「彩花、美緒はまたうつ病の症状が出てるんだ。今日は精神的にかなり不安定なんだよ」私は黙って颯介を見つめた。「知ってるだろ?美緒は結婚しない主義だから、一生結婚するつもりはないんだ。でも、一度でいいから結婚式を経験してみたかったって。それだけがずっと心残りだったんだよ」私は手にしていた指輪のケースをゆっくりと閉じた。颯介は眉をひそめ、さらに続ける。「ちょっと下がって休んでてくれないか?その間に、美緒と一通り式をやらせてほしいんだ。美緒の願いを叶えてやったら、俺たちの式を再開すればいいだろ?」私は低い声で尋ねた。「……本気で言ってるの?」途端に颯介の表情が険しくなり、冷たい口調で言い放った。「彩花、美緒は病気なんだぞ。少しは心を広く持てないのか?」この3年間、私は颯介から同じ言葉を何百回と聞かされてきた。美緒が夜中に胃が痛いと言えば、颯介は私と寝ているベッドから抜け出し、薬を届けに行った。そして私には心を広く持てと言った。美緒の誕生日には、高熱で寝込む私を置いて、美緒とテーマパークへ花火を見に行った。そのときも私には心を広く持てと言った。そして今度は私たちの結婚式だ。親戚も友人も、職場の上司まで集まっているこの場で、颯介は花嫁である私に席を譲り、自分の幼なじみに花嫁気分を味わわせろと言うのだ。でも私は怒鳴らなかった。今までのように問い詰めたり、言い争った
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