オスロの極夜は、今年は遅れてやってきた。年内最後の太陽が地平線に沈み、名残の光が、海のように青い男の瞳に映りこむ。北半球は間もなく、三か月に及ぶ長い夜に入る。昼のない日々は、普通の人間にはこたえる。だが彼にとって、闇こそが唯一の保護色だった。「伊藤嵐。この名前は、拾いものだ。今日はこの街に来た最初の日。さて……何を話そうか。そうだな、どうしてここに来たのか、だっけ? ここの気候が気に入ったからさ。子供の頃からずっと南で暮らしていたけど……ふっ、あいつも想像しなかっただろうね。一度血に染まった手は、そう簡単には温まらないんだよ。やってしまったことが山ほどある。なら、最後まで貫くしかない。だから俺は、夜の明けない場所へ行く。当然だろう?」窓の外から最後の陽光が消え、男の輪郭も薄闇に溶けた。目の前のビデオカメラを見つめ、気まぐれに「日記」を撮っている。もともと生活を記録する習慣などない。殺しや放火を生業にする人間にとって、わずかな痕跡を残すことさえ命取りになる。だが、今日は違う。人生をやり直す、記念すべき日なのだ。過去と完全に決別するため、片目と片脚を差し出してまで地獄を抜け出し、遠いこの国へたどり着いた。忘れてしまえ。憎しみも恨みも、血の赤も闇の黒も。他人のために命をすり減らすのは、もうたくさんだった。明日をも知れず、刃と炎に追われる暮らしにも、心底うんざりしていた。そうだ。逆らうと決めたあの瞬間から、その言葉が何度も頭の中を巡っていた。たとえ死ぬことになっても、二度とあの男の言いなりにはならない。滑稽な話だ。あの男を思い出すと、整った顔に憤りが浮かんだ。最後に会ってから、どれほど経っただろう。七年か、十年か。逃亡を始めてから、一度も会っていない。顔さえ、もうはっきりとは思い出せない。それなのに、あいつを思うたび湧き上がる恨みだけは、少しも薄れていなかった。その男は異母弟であり、かつての恋人でもあった。すべてを捧げた果てに返ってきたのは、一枚の指名手配書だけ。遠い昔の彼は、真心を尽くし続ければ、ほんのわずかな温もりくらいは返してもらえると、無邪気に信じていた。だが、間違っていた。愚かだった。あの男にとって、彼は利用するための道具でしかなかった。役に立つうちは、永遠の愛だろうと何だろうと、いくらでも口にできたのだ。命を削って差し出した真心も、
Terakhir Diperbarui : 2026-10-23 Baca selengkapnya