どれほど前からそこにいたのか。汐里の姿に気づいているはずなのに、駆け寄ろうともせず、ただじっと私を見つめていた。一瞬、昔の自分ならこの選択を喜んだだろうかと考えた。けれど今の私には。早く事務所へ戻って図面を仕上げたい、それ以外の感情は残っていなかった。*離婚届の提出は半年間引き延ばされた。慎司が頑なに署名を拒んだからだ。弁護士にも相談した。調停を起こすことは可能だが、時間も労力も取られる。そんなことにこれ以上、人生を割きたくはなかった。最終的に慎司を折れさせたのは、父が遺した1冊のノートだった。実家の片付けをしていた慎司が見つけ出したものだ。ノートの間に、1枚の便箋が
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