紗月の遺書玉木真吾(たまき しんご)と一緒に過ごした十年。私たちは、互いに苦しめ合い続けた十年でもあった。
彼は愛人をよく替え、私はL市中から嘲笑される存在になる。
一方の私は、毎日のように彼のカードを使い、彼の金を散財し、街中を騒がせながら浮気相手を叩きのめし、有名な悪妻と呼ばれるようになる。
がんの診断書が下りたその日、もう何もかもが限界だと悟る。
私は真吾に電話をかけた。「真吾、約束する。私たち、離婚しよう」
電話の向こうで、彼は新しい女を腕に抱き、鼻で笑う。「沖田紗月(おきた さつき
)、本気でその作り話を信じると思ってるのか?
その手はもう何度目だ。つまらない」