元彼の兄と結婚したら、元彼が逆上したトップクラスの名門・渡辺家が本物の継承者を見つけたその日、渡辺家の養子である私の婚約者・渡辺水輝(わたなべ みずき)は家を追われ、交通事故で両耳の聴力を失い、半身不随となった。
私・小林ネネ(こばやし ねね)は全てを捨てて彼と駆け落ちし、喜んで12畳の賃貸アパートで共に暮らした。
お金を稼ぐため、私は昼、配達のアルバイトを掛け持ちながら、夜はバーで働いていた。
胃に穴が開くほど酒を飲みながらも歯を食いしばって耐えてきた。
やがて彼の治療費を賄うため、一日六つの仕事を掛け持ちするようになった。
それでも、名医に診てもらうため、必死で金を工面したのだ。
最終的に、私は服を脱ぎ捨て、闇市のオークションに身を捧げた。
その時、VIP席でスーツ姿をしながら高慢な態度を見せる水輝の姿を見つけた。
すべては彼の嘘だったのだ。
彼は今、耳を傾けながら隣の女性の話にほほえんでいた。
誰かが彼を呼んだ。
「渡辺様」と。
水輝は札を2億5000万まで上げた後、ずっと黙ったままだった。
彼は私が頭を下げるのを待っている。彼に懇願するのを待っている。
卑屈に彼の愛を乞うように、私を連れて行ってくれるよう頼むのを待っている。
だが今回、私のために「いくらでも払おう」と言う本物の渡辺家継承者・渡辺崇時(わたなべ しゅうじ)を見つめながら、私は笑った。
「水輝、もうあなたは要らないわ」