奈落に散る、十年の嘘と贖罪私の妹、高橋羽衣(たかはし うい)は、極度の愛情飢餓を抱えた地雷女だ。
彼女の人生最大の執着、それは私、高橋咲茉(たかはし えま)の持ち物を奪うこと。
幼い頃は両親の愛を、大人になってからは恋人の愛を奪おうとした。
彼女は若さを武器に、大学教授である私の恋人のベッドに何度も潜り込んだ。
「お姉ちゃん、あなたのものは全部私が奪ってやるんだから!」
彼女は牙をむいて挑発してくるが、その度に黒木奏多(くろき かなた)に無慈悲に放り出されていた。
「俺は咲茉のものだ。誰にも奪わせない」
私の妹であることに免じて、奏多は根気強く彼女を傍に置き、その更生に力を貸してくれていた。
羽衣が騒ぎを起こすたびに、奏多は容赦なく彼女を少年院へと叩き込んだ。
25歳の誕生日、私は警察の昇任試験に合格した。
羽衣がケーキを持ってやってきた。その瞳の奥からは、かつての刺々しさが完全に消えていた。
奏多は片膝をつき、差し出した婚約指輪が暖かな光を反射して煌めいている。
友人は皆、仕事も恋も順風満帆だと言ってくれた。
反抗的だった妹さえも更生させた、人生の勝ち組だと。
――あの日。初めての風俗店摘発任務で、ホテルのドアを蹴破るまでは。
そこで私が目にしたのは、羽衣に跨がれ、なすがままに快楽を貪るに任せる奏多の姿だった。