蒼い空の下、君と紡ぐ幸福同窓会の席で、工藤結翔(くどう ゆいと)の初恋の相手である浅田琴葉(あさだ ことは)が、私、林田芽依(はやしだ めい)の目の前で彼に詰め寄った。
「私、妊娠したの。これでようやく、私と一緒にいられるよね?」
結翔は私に料理を取り分け、穏やかな微笑みを浮かべたまま答えた。
「耳の聞こえない彼女を一生守ると決めたんだ。今さら約束を破るわけにはいかない。君の妊娠は、彼女には一生隠し通す。もし知られたら、どんな事態になるか僕にも見当がつかないから。
その代わり、君とは本物の婚姻届を出そう。彼女に渡してある証明書は、どうせ偽物なんだから」
結翔はスマホを置くと、私に向かって優しく微笑み、明日レストランを予約したこと、結婚七周年を祝おうということを手話で告げた。
けれど、彼は私の目からこぼれ落ちた涙を見ていなかった。
結翔は知らない。三日前、私の耳が治ったことを。
渡された婚姻届受理証明書が偽物だということにも、とっくに気づいていたことを。
そして、明日の朝一番の航空券をすでに予約していることも。
明日が過ぎれば、私たちは二度と会うことはない。