耳に残る演技を思い返すと、
アルミンの“か細さ”と“硬さ”が同居する瞬間が真っ先に浮かぶ。
僕が最も印象的だと感じるのは、瀕死の状態からかすれた声で仲間に語りかける場面だ。'進撃の巨人'の中でアルミンが酷く焼かれ、体が動かない中で吐くように言葉を紡ぐところは、声の細かな揺れ、途切れ、吐息の使い方が極めて繊細で、まるで本当に体が壊れていくかのようなリアリティがあった。感情の重みを抑えているのに、聞き手の心に刺さる──小さな音量で語ることで逆に言葉の重みが増す演出が見事だと感じた。
対照的に、戦術を説明するときの冷静で切れ味のある声色も別の意味で印象深い。普段の戸惑いや不安を薄皮一枚で隠しながら、計算と決断の言葉を淡々と紡ぐアルミンは、声だけで「内心は揺れているがやらねばならない」と示してくれる。弱々しさと理知的な強さが同じ人物の中で頻繁に行き来する役柄を、声優は抑揚や語尾の処理、呼吸の間合いで巧みに描き分けていた。
この二面性があるからこそ、アルミンの声の一語一語が胸に残る。演技がキャラクターの成長や選択の重さを補強していて、単なるセリフ以上のものを与えてくれる──そんな手応えを何度も味わった。聴き終えた後にも余韻が残る、そういう場面が特に印象的だった。