3 Respostas
『火花』のオーディオブックは、漫才師志望の主人公が夢に挫折していく過程を、まるで落語を聞くような語り口で届けてくれる。下積み時代の苦労話が延々と続くかと思いきや、ところどころに散りばめられたユーモアが効いていて、悲壮感ばかりが先行しないのがいい。特に師匠との関係がこじれていくシリーズは、ナレーターの声質が段々と濁っていく演出が秀逸。
最終章近くで主人公が地方公演に失敗する場面の、観客のザワつきを再現した効果音には鳥肌が立った。成功か失敗かじゃない、その過程そのものが芸なんだと気付かせてくれる作品だ。
『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』のオーディオブックを聴いたとき、涙が止まらなかった。ストリートミュージシャンのジェームズと野良猫ボブの実話を基にした物語で、ナレーションが二人の絆の深まりをじわじわと伝えてくる。特にジェームズが薬物依存から抜け出せずに苦しむシーンでは、声のトーンが絶望感を如実に表現していて、聴いているこちらまで胸が締めつけられた。
最後の方でボブがジェームズのギターケースに座り込む描写があるんだけど、その時のナレーターの息づかいまでが『救い』を感じさせるんだよね。オーディオブックならではの臨場感が、文字では伝わらない温かみを運んできた。挫折から這い上がる人間の強さを、耳で味わえる稀有な作品だと思う。
聴覚障害をテーマにした『聲の形』のオーディオブック版は、障害と向き合う主人公の心情が音声表現によってさらに深く迫ってくる。いじめや自責の念に苛まれる場面では、ナレーターがわざと声を震わせたり、無音の間を長く取ったりと工夫が凝らしてあって。普通の小説では読み飛ばしがちな心理描写の細部が、耳から入ってくることで強烈に記憶に残るんだ。
途中で主人公が補聴器を壊されるシーンがあるけど、その瞬間の効果音とナレーションの絶妙なバランスが「挫けそうになる心」を代弁しているようで。最後まで聴き終えたとき、自分の中の「できないこと」への見方が少し変わった気がする。