感情の細部を拾うところから入ると、
ケヴィン視点は自然に説得力を持ち始める。僕はまず“感覚の小さな指標”を決めるようにしている。呼吸の速さ、視線がどこに向かうか、手の動き、特定の言い回し――そうした些細な癖を数個だけ選んで徹底的に守ると、読者はたちまちその内面に引き込まれる。
次に重要なのは、本筋の出来事をケヴィンの主観で再解釈することだ。外側の事実は変えずに、同じ出来事を彼がどう受け取るか、何を見落とすか、どんな言葉を内心で繰り返すかを描く。僕の場合、まず短い独白を書き、それからその独白を具体的な行動描写に変換する手順を踏む。こうすると説得力のある内面描写と外面的行動が両立する。
最後に、ケヴィンの矛盾を恐れないことだ。完璧な一貫性ではなく、矛盾を通じて人間らしさが出る。自分が読者ならどの瞬間に「それはケヴィンらしい」と感じるかを常に問いながら、細部を調整していくと良い。結果として、視点が芯の通った声になっていくのを楽しめるはずだ。