ふとキャラクターたちを頭の中で並べてみたら、自然と一人ひとりの音色が聞こえてくるようだった。『
ムジカ』の主要人物は、物語の核になる存在ばかりで、それぞれが楽曲のパートのように重なり合い、衝突し、補完し合う。ここでは主要な顔ぶれを挙げつつ、性格や成長の軸、他者との関係性を中心に解説してみる。
リオ・カナデ — 物語の中心を担う青年。幼少期に受けた音楽的な啓示が原動力で、技術的成長よりも表現の真実性を追うタイプだ。序盤では迷いが多く、演奏に感情が乗らないことが課題になるが、旅や出会いを通じて自分なりの「音」を確立していく。感受性が強く、他者の痛みを自分の演奏に投影する傾向がある。
エルダ・フェルネ — リオの幼馴染で、冷静な視点を持つピアニスト。論理的に曲の構造を解析するのが得意で、リオのアンバランスさを補う役割を果たす。葛藤が起きたときに的確な言葉で方向性を示すことが多く、物語中盤で重要な選択を迫られる。
マルクス・ヴァーン — 謎めいた指導者的存在。かつて栄光を誇ったが、ある事件で楽壇を離れており、その過去が物語の鍵になる。表向きは厳格だが、弟子の成長を人一倍願っており、独特の教育哲学を持つ。
セリーヌ・ノア — 対照的なライバル。技巧に優れ、公演では冷徹な美しさを見せる。彼女の動機は単純な勝利欲ではなく、失われた何かを取り戻すことに根差しており、終盤での和解的展開が大きな感動を生む。
アイリーン・サント、オットー・ベック、ハルカといった脇役も物語に深みを与える。特にアイリーンは組織的な圧力を象徴し、オットーは楽器製作や小道具でのユーモアを担当する。全体として、各キャラクターは単なる役割以上に内面の変化を伴って動くため、誰を追っても味わい深い。聴き手として、あるいは読み手として彼らの旅路を追うのは本当に楽しい。