そのタイトルを見たとき、まず浮かぶのは圧倒的なスピード感と一撃必殺の印象です。'
疾風迅雷'は四字熟語として「疾(はや)き風と迅雷(じんらい)のごとし」という古典的な表現に由来しており、素早さと一瞬の破壊力を同時に表している言葉です。漢字それぞれを見れば、疾は速度、風は形のない流れ、雷は音と衝撃を伴う存在感を示しますから、タイトルだけで物語のテンポや戦い方、あるいは主人公の性質が伝わってくるように思えます。
物語の文脈において作者がこの言葉を選んだ理由は大きく二つに分けて考えられます。一つ目はアクションや事件の展開そのものについてで、章の切り替わりが鋭く、展開が次々に襲いかかってくる構成を示唆するためです。読み手に「待ったなし」の感覚を与え、息つく暇もない物語運びを約束するタイトルとして有効でしょう。二つ目は人物描写の象徴性で、主役や重要な人物が冷静に、しかし一瞬の判断で情勢をひっくり返すタイプであるというメタファーとして機能します。沈黙のあとに訪れる一撃、静と動のコントラストが物語に緊張感を与えると同時に、その人物が抱える重みや孤高さを際立たせることもできます。
さらに響きと視覚的なイメージにも意味を込めているはずです。『疾風迅雷』という文字列は見た目にもリズムがあり、短い言葉で大きな力を感じさせるので、タイトル自体が作品のトーンを決定づけます。場合によっては自然現象を借りた運命論的な側面、突然の変化が避けがたいことを示す暗示として用いられることもあるでしょう。個人的には、このタイトルは単なる戦闘描写の約束以上に、物語全体の「変化の速さ」と「結果の重さ」を同時に示していて、読み終えたあとにじわじわと余韻が残るタイプの作品を想像してしまいます。読み手を一気に引き込む力があるタイトルだと感じます。