まずは基礎から始めよう。
法螺貝は見た目よりずっと繊細で、正しい吹き方を身につけると音がピンと安定する。まず楽器選びだが、初心者には比較的吹きやすい中サイズの貝(直径や全長が極端でないもの)を勧める。天然貝は形状や内腔が個体差があるため、店や師匠に一度触らせてもらうのがいちばん。金属や合成のレプリカも練習用には便利で、扱いやすさを比べるのに向いている。マウスピースを付けるタイプなら、自分の唇に合った大きさを試してみること。私は最初、唇が疲れやすかったので小さめの縁があるタイプを選んだら楽になった経験がある。
呼吸と姿勢の習得が肝心だ。胸だけで吹こうとすると音が短くなりがちで、腹式呼吸で息をゆっくり長く吐く練習をまずやるといい。唇の作り方(アンブシュア)は、歯をやや閉じ気味にして唇を軽く引き締め、唇の中央から空気が細く出るように意識する。唇を振動させる“ブズブズ”の音を唇だけで出す練習をしてから法螺貝に移ると早い。最初の頃は大きな音を無理に出そうとせず、短い長音(ロングトーン)を繰り返す。1〜2分の持続を数セット、合間に休憩を入れて唇を労わる。音の高さは口の開け具合や息の速さで変わるけれど、まずは低音域できれいな芯のある音を出すことを目標にするのが近道だ。
具体的な練習メニューと習慣も重要だ。①唇の振動練習(5分)②腹式呼吸でロングトーン(10分)③部分音(オーバートーン)を探す練習(10分)④短いフレーズや合図音の反復(10分)という流れを週に数回続けると変化が見える。耳を鍛えるために録音を聴いたり、上手な演奏家や宗教儀礼での使い方を観察すると参考になる。私は地元の講座で古式の吹き方と礼儀を教わってから、音の持つ意味や出し方がより明確になった。衛生面では唇やマウスピースを清潔に保ち、唇の疲労や内出血が出たら無理せず休むこと。長時間の連続練習は逆効果になる。
最後に、法螺貝は技術だけでなく心構えや場の作り方も大切だ。伝統的な用途や礼儀を尊重しつつ、自分の体と相談しながら徐々に範囲を広げると長く続けられる。上達の喜びはじわじわ来るものだから、焦らず一歩一歩楽しんでほしい。