原作のテーマがアニメ化でも伝まる脚本の書き方は何ですか？

脚本に取りかかる前の下書きで必ず一文のテーマ宣言を作る癖がある。これがあれば各シーンがテーマに貢献しているかどうか判断しやすくなるからだ。僕の場合、まず原作の象徴的な場面やフレーズをリストアップして、それらを映像でどう置き換えるかをスケッチする。台詞だけで説明しようとせず、画面の“余白”で伝えることを重視している。

映像化で効果的なのは、キャラクターの選択肢に意味を持たせることだ。小さな決断の積み重ねがテーマを補強するので、ワンカットやワンカットの積み重ねにこだわる。音楽や効果音もテーマ表現の一部になるから、脚本段階で「ここにはどんな空気感が必要か」を想像してメモしておくと、完成形がぐっと近づく。具体例として、繊細な感情の描写を軸にした作品では、台詞を削って演技と音楽で埋めることが有効だと感じている。

原作のテーマをアニメで伝えるには、言葉にできる“短い定義”を持つことが出発点になると感じている。脚本を書くとき、どの登場人物のどの行為がその定義に直結するのかをまず選別する。何を映像に残し、何を削るかは必然的にテーマに影響するので、削る決断もテーマを守るための能動的な作業だと捉えている。

場面の選び方は感情の流れを作るために重要で、単純に原作の順番をなぞるだけでは届かないことが多い。場面の順序を入れ替えてもテーマが失われないか、逆に強調されるかを常に検証する。たとえば視覚的・音響的モチーフを繰り返すことで、台詞で説明しなくても観る者の心に主題が残る。個人的には、ある短いモチーフを数カ所で差し込むだけで、全体のメッセージが一本化される経験を何度もしている。

人物設計では、各キャラクターにテーマを体現する「小さな選択」を与えることを意識する。大きな説明シーンを増やすより、日常の細かな行動や反応でテーマを示すほうがアニメーションと相性が良い。対話は簡潔にしつつ、表情、間、画面構図で補強すると説得力が出る。また原作者の言葉を借りる場面が必要なら、それをそのまま使うかどうかは慎重に考える。時に原文のままが最も強い場合もあるし、逆に違う表現のほうが視聴者に届く場合もある。

制作チームとはテーマについて共通認識をつくるミーティングを重ねる。演出、音楽、美術、それぞれの担当が“そのテーマをどう受け取ったか”を語ると、脚本段階で新しい着想が生まれることが多い。最終的には、アニメという視覚・聴覚の言語を使って原作の核心を体験に変換することが目的で、脚本はその変換マップになる。自分が関わるときは、その地図が迷わず目的地へ導くかどうかを何度も確認して仕上げるようにしている。