口の中で何度も噛んでから出す言葉に、人は強く反応する。そういう台詞を作るには、まずキャラクターの失敗や後悔を台詞に直接持ち込まず、行動や小さな仕草で示すことを優先する。台詞はその行動を受けて初めて意味を帯びるものにするのが鍵だ。
個人的には、短く切れた文の連続が効果的だと感じる。長い説明よりも、断片的な言葉のほうが観客に補完させる余地を残すからだ。『カウボーイビバップ』のスパイクの
無愛想な言葉遣いを思い出すといい。彼の一言一言は多くを語らず、それでも背後にある物語を観客に想像させる力を持っている。ユーモアや乾いた皮肉も、緩衝材として憐憫を引き出す道具になる。
また、対話のテンポを作るときは相手役の反応を常に想定する。相手の沈黙や拍子抜けする返答があることで、元の台詞が際立ち、無言の分量が感情を膨らませる。私はこうしたテンポとギャップを設計する段階で、何度も言葉を削っては位置を変えてみる。そうして残った台詞だけが、本当に観客の胸に届く。