まずは王道の開幕の工夫から話そう。
序盤は“疑問”と“欲求”を同時に植えつけるのが鉄則だと考えている。掴みの一行で読者の好奇心を刺激しつつ、主人公の欲しいもの(目標)を明確にする。僕はよく、探し物そのものよりも「それを手に入れたら何が変わるのか」を先に示すようにしている。単なる宝物の描写だけでは薄くなるから、登場人物の内面や過去の負債と絡めておくと感情移入が早まる。
中盤では小さな勝利と挫折を交互に置いてリズムを作るといい。章の終わりにちょっとした情報を小出しにして次を読みたくさせる技術は、有効な引き止め装置になる。伏線はなるべく視点キャラの視界内で回収すると納得感が強まるし、予想外の選択をさせれば“この先どうなる?”という感情が持続する。
細かな工夫としては、宝の性質自体に価値観の揺らぎを持たせること。『インディ・ジョーンズ』のように単純な
財宝ではなく、民族や個人にとって意味が変わるアイテムにすると読者の好奇心が長持ちする。研究メモや古文書、地図の断片といった“証拠”を断片化して提示するのも効果的だ。書き手としてはネタ切れを防ぐために、サブプロットを三つほど用意して交互に緩急を付けると最後まで読者を引っ張りやすいと感じている。