聴き返すたびに、制作陣の意図が鮮明になる。『
呼ぶ子』のサウンドトラックはまず何よりも“場の空気”を大事にしていると感じた。
自分は音楽の細部が好きで、特に間の取り方や余韻の残し方をよく聴くのだが、ここでは無音や静かな余白が効果的に使われている。楽器選びも抑制的で、必要な音だけを置くことで映像の心理描写を邪魔しない。一方で、キャラクターに紐づくモチーフは繊細に変奏され、同じ旋律が状況に応じて色を変えるから人物の内面変化が音だけでも追える。
制作段階では監督と作曲者の対話を重視して、映像と音の同期ではなく「呼吸」を合わせることに注力したんだろうと想像している。リバーブや定位の処理も丁寧で、空間感が自然に立ち上がる。僕にとっては、あのバランス感覚が『千と千尋の神隠し』の音づくりを連想させる瞬間が何度もあった。結果として、音楽がむやみに前に出ず、物語と共振するような設計になっていると感じた。