メロディの輪郭を大切にしつつ、編曲で距離感を変えるのが面白い。まずは原曲のハーモニーをシンプルにして、歌が前に出る空間を作ることを勧める。アコースティックギターかピアノでイントロを短くまとめ、2小節目からコードを少しジャズ寄りに差し替えると大人っぽい雰囲気になる。個人的には、裏コードやテンションをさりげなく入れると瞬時に色気が増す。ここでの着想は'Fly Me to the Moon'のような柔らかなジャズ感から得たものだ。
次にダイナミクスの作り方。サビ前を一段落ち着かせて息を作り、サビで楽器を増やして一気に解放する。ストリングスは短いパッドで支える程度にして、リードは歌の合間にカウンターメロディを入れると歌詞の一語一語が際立つ。私はしばしばボーカルに軽いビブラートや語尾の脱力を加えて、聴き手が胸に触れる瞬間を作るようにしている。ライブではエンディングをフェードアウトよりもワンフレーズのア・カペラで締めると印象が残る。