純潔をテーマにしたファンフィクションとしてよく話題に上るのは、『鬼滅の刃』の冨岡義勇と胡蝶しのぶの関係を描いた作品群だ。水の呼吸を使う冨岡の
孤高さと、蟲の呼吸を使うしのぶの優しさが、清らかな絆として再解釈されることが多い。特に「水色の誓い」という作品は、二人の過去を丁寧に紡ぎながら、戦いの中でも汚れない心の美しさを表現している。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の同人創作でも、主人公のヴァイオレットが手紙を通じて触れる人々の感情を、より繊細に掘り下げたものが目立つ。「
白薔薇の記憶」という短編集では、彼女が代筆する過程で出会った老夫婦の初恋の話が、雪の日に溶けるように描かれる。無垢な感情のやり取りが、戦争で傷ついた世界観と対比されて際立つ。
一方、『SPY×FAMILY』のアーニャを中心にした創作では、子どもの無邪気さがスペイアクションと絡むことで生まれるギャップが好まれている。「ペンギンと星」という作品では、彼女が初めて雪を見て喜ぶ様子を、ロイドとヨルがそれぞれの事情を抱えつつも守ろうとする様子がほのぼのと綴られている。ここでの純潔は、家族の偽装関係の中に芽生えた本当の温かみとして表現されている。
これらの作品に共通するのは、キャラクターの本来の背景を尊重しつつ、原作では深掘りされなかった心の清らかさを可視化する手腕だろう。戦闘や陰謀がある世界観であっても、揺るぎない優しさを描くことで、読者がほっと息をつける瞬間を作り出している。