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私の愛は特別な人に

私の愛は特別な人に

By:  ゴマたれCompleted
Language: Japanese
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白野晴子(しらの はるこ)が賀川時男(かがわ ときお)と結婚する一ヶ月前、偶然、彼が親友と話しているのを耳にした。 「晴子のことを特別に愛しているわけじゃない。ただ、彼女が浅子にあまりにも似ているからだ。浅子とは結婚できないから、せめて彼女に似た代わりの人を娶るしかなかった」 晴子はまるで頭を殴られたような衝撃を受けた。 何年も自分を追い続け、両親を事故で亡くしたときには毎日そばにいてくれ、自分のために命を懸けることさえ惜しまなかったその男が、結局のところ自分をただの代わりとして見ていたなんて、彼女には信じられなかった。 深い悲しみに沈みながら、彼女は結婚から逃げる決意を固めた。 時男、私を欺いたのなら、今度はあなたにもこの裏切りの痛みを味わわせて見せる。

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Chapter 1

第1話

「晴子、本当に俺に結婚から逃げる手助けをさせるつもりなのか?」

電話の向こうから、岸部景伍(きしべ けいご)の冷ややかで低い声が聞こえた。

白野晴子(しらの はるこ)は携帯を強く握りしめ、確信に満ちた表情で答えた。「ええ、間違いわ」

「この1ヶ月の間に、お前の全ての身分情報を密かに抹消しておく。1ヶ月後、結婚式の当日には迎えを向かわせるから、お前を海浜市まで連れて行く。その時までには新しい身分も準備しておく。そうすれば、江崎市での一切合切とは完全に縁が切れるというわけだ」

晴子はしばらく黙り込み、やがて静かに言った。「分かった。お願いね」

電話を切った後、晴子は壁に掛けられた賀川時男(かがわ ときお)とのウェディング写真を見つめ、長い間ぼんやりと立ち尽くしていた。

その写真を撮った時、写真館のスタッフたちが一様に、時男と彼女は才子佳人で、まさに天が結べ付けた理想のカップルだと褒め称え、誰もがうらやむような愛情を育んでいたことを、彼女はよく覚えていた。

莫大な財産を誇る裕福な御曹司でありながら、彼はひたすら彼女だけを愛し続けてくれた。

彼女を嫁に迎えるため、時男は99回ものプロポーズを重ねた。そして心血を注ぎ、江崎市で最も華やかな結婚式を準備するだけではなく、自ら立ち会って彼女だけのための、世界に一つのウェディングドレスを作り上げたのである。

皆が口をそろえて言った――時男は彼女を骨の髄まで愛し、命のように大切にしていると。

初めの頃の晴子も、そう信じて疑わなかった。

三年の交際を経て、ようやく結ばれようとしていたその時、晴子は偶然時男が友人と話しているのを耳にした。

酒の席で、彼は友人にこう呟いた。「別に晴子のことを特別愛してるわけじゃない。ただな、彼女が浅子(あさこ)にそっくりなだけだ。浅子と結婚できなかったから、せめて似ている女を嫁にもらうしかなかったんだ」

晴子は雷に打たれたような衝撃を受けた。

信じられなかった。何年も私を追いかけ、両親を亡くして孤独だった私のそばに毎日寄り添い、私のためなら命さえ惜しまなかったあの男が、結局は私をただの身代わりとして見ていただけだったなんて。

晴子は息の詰まる思いで胸を押さえた。頭のてっぺんから足の先まで、血の気が一瞬で引くかのように冷たくなり、胸が張り裂けそうな痛みに襲われた。

そうか、あの優しさもぬくもりも、すべて偽物だったのか。

彼は彼女を愛していなかった。

彼が愛していたのは、血のつながりのない妹だ。

深い悲しみののち、晴子はこの恋を終わらせる決意を固めた。

時男に欺かれたのなら、今度は彼にも同じ痛みを味わわせてやる。

彼女は景伍を頼った。海浜市で絶大な権力を誇る御曹司であり、かつての同級生でもある。一ヶ月後、景伍は彼女が巧みに姿をくらまし、遠くへ飛び去るように画策した。

晴子は、唯一無二の愛だけを求め、この一生、決して誰かの代わりにはならないと誓った。

思い込んでいた時、ふと背後の扉がカチャリと音を立てて開いた。時男が帰ってきた。

時男は後ろからそっと晴子の腰を抱き寄せ、あごで彼女の頬をすり寄せながら言った。「晴子ちゃん、何を考えてたの?」

晴子の体が一瞬こわばり、ゆっくりと意識を取り戻した。

「別に。ただ、あなたがオーダーしてくれたあのウェディングドレス、ちょっと合わないみたい」

「じゃあ、どんなのが好きなんだ?」と時男が顔を上げて尋ねた。

晴子は少し考えてから言った。「ビスチェタイプがいいわ」

「わかった、それじゃあビスチェタイプに変えよう!」時男は少しのためらいもなく、あっさりと答えた。

数千万円もするウェディングドレスを、彼は替えようと言い出せば、すぐに替えてしまう。何でもないことのように。

自分が浅子の身代わりだという彼の言葉を直接聞いていなければ、晴子は彼が本心から自分を愛していると信じて、少しも疑わなかっただろう。

しかし、これらすべては彼が作り上げた物語にすぎない。

晴子がぼんやりしている隙に、時男はそっと彼女の頬に口づけした。

「晴子、近々、仕事が忙しくてお前と会う時間が取れない。どこか行きたいならアシスタントを付ける。仕事が終わったら、毎日家で一緒にいることで埋め合わせするから、いい?」

晴子は一瞬きょとんとし、それからゆっくりとうなずいた。

実のところ、彼女にはよく分かっていた。忙しいというのはただの口実で、実際には彼の義妹の浅子が今日帰国するからだ。

浅子は時男の継母の娘で、二人の間に血のつながりはない。

五年前、浅子はピアノの夢を追って海外へ留学し、それから五年間一度も帰らなかった。今、彼女が帰国したことで、時男の心もまた、彼女のもとへと引き寄せられていくに違いない。
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