映像化の難しさを考えると、まず空気感をどう映像に落とし込むかが最優先だと僕は思う。
柚やの作品は言葉の隙間や行間に感情が宿るタイプだから、単純に台詞を画面に並べるだけでは薄くなってしまう。だから脚本段階で何を語らせ、何を映像で示すかの線引きを慎重にやる。その際、カメラワークや編集のテンポ、音の余白を計算して、原作が持つ「沈黙の説得力」を保つことが重要だ。
たとえば『冬の灯』のような作品では、光と影の扱い、セットの質感、俳優の微妙な表情の拾い方に神経を使うべきだ。音楽は説明役ではなく感情の触媒に留め、無理に盛り上げない。脚色は避けられないけれど、作者の主題やモチーフを尊重して削ぎ落とす勇気を持つことが、結果的に映像の説得力につながると感じる。終わり方は観客に余韻を預けるくらいがちょうどいいと思う。