私が好んで使う選択肢の一つに "I find that perplexing" や "I'm at a loss to explain it" がある。これらは単に "I don't understand" と言うよりも丁寧で、心情の層を表現しやすい。もっと古風で堅い文脈なら "I cannot reconcile this" や "This is beyond comprehension" のように訳して、話者の威厳や困惑を英語で伝えることを優先する。
僕が選ぶカジュアル寄りの表現にはいくつか定番がある。最も素直なのは "I don't get it" や "That doesn't make sense" で、現代語の会話にすっと馴染む。もっと苛立ちや軽い侮蔑を前面に出したいときは "I don't buy it" や "That's absurd" を使う。逆に相手を小馬鹿にするようなニュアンスなら "As if that would do" や "That's ridiculous" と強めに出すこともある。
例として、風変わりな理屈で場をかき回すキャラが『ジョジョの奇妙な冒険』的な口ぶりで "解せぬ" と言ったら、僕は "That just doesn't sit right with me" を選ぶことがある。ニュアンスの幅をどう英語側で担保するか、その先を考えるのが楽しい。
若い敵対者や苛立ちを表す場面なら、口語的な言い回しが映えることが多い。僕なら会話のテンポを損なわないように "I don't get it," や "That doesn't make sense" を使うことが多い。軽い侮蔑や不信感を込めたいときは "I can't buy that" や "That rings false" を選ぶこともある。これらは短くて自然だから、原語の鋭さを保ちやすい。
一方で、年配の人物や格式高い場面での『解せぬ』は、古風で重みのある訳に傾けるべきだ。そういうときは "I cannot fathom it" や "This is incomprehensible" として、語気の重さを英語側で補う。結局のところ、単に言葉を置き換えるだけでなく、話者の立場や場面の温度を英語表現にどう写すかが肝だと僕は考えている。
翻訳の現場で『ぬかに釘』に遭遇すると、その場のニュアンスをどう英語で伝えるかでいつも頭を悩ませる。
語義としては「どれだけ力を入れても効果が出ない」「その手間が無駄になる」といったニュアンスだから、英語では場面に応じていくつかの言い回しを使い分けるのがいいと思う。例えば『to try to nail jelly to the wall』は、やってみても形が定まらない不可抗力の無駄さをユーモラスに伝えられる表現だ。もっと直接的に言うなら『a wasted effort』や『to be a futile exercise』も自然だ。
僕の経験では、相手が努力の無意味さを笑い飛ばせる文脈なら前者、深刻さを残したい場面では後者を選ぶと読者に違和感を与えにくい。そんなふうに使い分けるのが落とし所だと感じている。