文化差をどう埋めるかを考えると、単純な置き換えでは伝わらないことが多い。ある場面では「なんでも ないよ」が本心の否定であり、むしろ心配を誘う演出になっていることがある。そういう場合、直訳の「It’s nothing」だけだと弱いので、「There’s nothing to tell」や「It’s nothing to worry about」といった少し説明的な英語を選ぶことがある。私がそう訳すのは、英語話者にとって「何でもない」という言い方があまりにもあっさりしすぎて、裏にある感情が伝わりにくいと感じるからだ。
日常会話に近い自然さを重視するなら、まず私が考えるのは軽さと親しみだ。「なんでも ないよ」は友達同士で使うことが多いので、英語では「No big deal」や「It’s nothing」と訳すとしっくり来る場面が多い。短くて口語的な表現は、会話のテンポを壊さず歌にも馴染みやすいからだ。
ただし歌詞では語感も重要だから、縮約形を使って「It’s no big deal」や「Don’t worry ‘bout it」とすることも考える。私が注意するのは、あまりにも軽くすると本来の隠れた感情が消えてしまう点だ。だから原語の曖昧さを残すために、訳詞の中で曖昧な部分をあえて残すこともよくある。そうすることで聴き手が自分の解釈を持ちやすくなると感じている。