'The Great Gatsby'のように象徴と空気感で成り立っている作品では、形容詞や比喩の微妙な揺れが意味の幅を作っている。直接的な訳語で明確にしてしまうと象徴性が薄れるため、時には日本語であえて曖昧さを残す。逆に社会的な階層や時代背景の説明が必要な箇所は、語句を補って読み手に文脈を示すこともある。
たとえば、'The Lord of the Rings'の固有名や古語表現は、単に音を写すだけだと世界観が薄くなる。そこで語感を保ちながら、日本語の古風さや神秘性を添える語彙を選んだり、注で背景を補ったりする。固有名詞の翻案や神話的表現の翻訳では、読者が無理なく世界に入れることと原文の異質さを両立させる工夫が欠かせない。
'Pride and Prejudice'のような会話中心の作品では、話者の階層や礼儀の差が会話の皮肉や笑いになっている。そのため、直訳で形式を保つか、意図を優先して自然な日本語表現に寄せるかで悩む。結婚や社会的体裁をめぐる語彙の差を、日本語でどう再現するかがポイントだ。語調を示す語尾や間投詞を工夫することで、失われがちな機微を取り戻す努力をする。