昨日、翻訳ノートを眺めていて気になった表現があった。
原文の「何だよもうまたかよ」は感情が凝縮された短いフレーズなので、英語ではニュアンスの取り方でかなり変わる。直訳に近い形だと "What the hell, not again!" や "Oh, not this again!" が自然だと思う。前者は強めの怒りや驚きを含み、後者はがっかりや呆れに寄る軽さがある。
作品のトーンによっては "Seriously? Again?" や "Come on, not again!" のように会話調にしても違和感がない。例えば'君の名は'のように若いキャラ同士の苛立ちなら、略した "Not again, seriously!" が手早く状況を伝えられる。僕はいつも、台詞の前後関係を見て、怒りの強さとキャラの語感に合わせてこれらを使い分けるようにしている。
翻訳の現場でよく頭を悩ませるのは、おやじギャグをどこまで“遊ばせる”かという線引きだ。
経験を重ねてきた僕は、まずネタの種類を見分けることから始める。語呂合わせ系か、同音異義語を利用したものか、あるいは文化依存の一言ボケか。例えば日本語の同音ネタとしてよくある「今日はタイムセールじゃなくて、鯛ムセールだよ!」というギャグがある。ここは直訳しても英語話者には意味が通らないから、機能的に等価な英語のダジャレに差し替える。
適用例として、この「鯛/タイム」ネタは英語では魚の名前で韻を踏む方向に変換して"It's not a time sale—it's a 'tuna' sale!"とするか、もっと自然な会話に落とすなら"Huge fish discounts—what a catch!"のように意訳して反応(苦笑/うめき)を狙う。重要なのは、笑いの種類を残すこと。場合によっては補足でニュアンスを足すか、別の英語ダジャレへ完全に置き換える判断をする。最後に、観客(読者)の想定反応を想像して選ぶのが鍵だ。
翻訳作業に取り組むとき、文脈を手繰り寄せてから表現を決める癖がついている。まず指摘したいのは“パリイ”が英語の動詞 "parry" に由来している点で、日本語の片仮名表記だと意味に幅が出やすいということだ。直訳すると "I parry everything." になるが、このままだと語感がやや機械的で、どの時制やニュアンスを出したいかで変わる。
実戦的なニュアンスを出したければ "I can parry anything." がよく使われる。能力を示すので「俺はどんな攻撃でも受け流せる」という自信を含められる。誓いや宣言っぽくしたければ未来形の "I'll parry everything." 。対戦の実況やセリフだと、短く鋭く "I parry everything that comes at me." や "Nothing gets past my parry." のようにローカライズすることもある。
用語の選択も重要で、剣技やフェンシング的な文脈なら "parry" が最適だが、盾で受け止める・弾くといった意味を強めたいなら "block" や "deflect" も候補になる。個人的には原文の喧嘩腰で冗談めいた自慢を残したいなら "I can parry anything"、断言・宣言なら "I'll parry everything"、シンプルに現在形で習慣や特技を示したいなら "I parry everything." を推す。場面に応じて語尾を調整すると生き生きした訳になるよ。
直球な英訳を考えると、『翻訳者はキスでふさいでバレないで』はこう訳すのがしっくりきます。"Don't Let the Translator Find Out — Seal It with a Kiss." この形だと原題の因果関係と命令口調が保たれていて、全体のリズムも英語のタイトルらしくまとまります。
用法のポイントを挙げると、「バレないで」は避けるべきことの促しで、英語では "Don't let..." で自然になります。一方「キスでふさいで」は直訳すると "seal with a kiss" や "shut (someone) up with a kiss" になりますが、後者は口語で強すぎる印象を与えるので避けたほうが無難です。"Seal it with a kiss" はロマンチックさを保ちつつ意味も伝わるので、作品の雰囲気に合わせるならこれを選びます。
個人的には、この英訳は読者にほどよいミステリアスさと軽いロマンを期待させると思うので、タイトル用として有効だと感じています。
言葉に触れるといつもワクワクする。そこから派生する微妙なニュアンス遊びが、今回のフレーズにも詰まっていると思う。日本語の「意味がわかると怖い話」は直訳すると少し長くなりがちだが、核となる要素は「理解した瞬間に怖さが増す」という時間的・因果的な逆転だ。
私は普段、読み手の反応を想像しながら訳語を選ぶ。実用的で分かりやすい候補なら、'Scary stories that get scarier when you understand them' が無難で伝わりやすい。もう少し短く自然な表現を求めるなら、'Creepy stories that become frightening once you get the meaning' や 'Stories that are scarier once you understand them' といった言い回しも使える。
語感の問題で「scary」と「creepy」のどちらを選ぶかは重要だと感じる。前者は直截的でホラー全般に使えるが、後者はじわじわ来る不気味さに向く。投稿の文脈や英語圏の読者層に応じて、短めのタグ風にするなら 'Creepy stories with twist meanings'、フォーマルに説明するなら最初に挙げた長めの訳を使うといい。