翻訳者は西部戦線 異状なしのどの表現を訳すのに苦労しましたか?

2025-10-25 09:46:22 149

3 回答

Chloe
Chloe
2025-10-27 23:50:19
紙面上で最も手強かったのは、作者が繰り返す簡潔な比喩と、その裏にある感情の“省略”をどう表すかだった。『西部戦線異状なし』では多くが語られず、読者が行間を補う必要がある。日本語で余計な説明を入れると原作の沈黙が失われる一方で、何も補わないと情景が薄くなってしまう。私はその中間を探る作業に時間をかけた。

用語の翻訳でも微妙な選択を求められた。例えば兵科名、軍司令の書式、戦闘の地形描写などは当時のドイツ語特有のニュアンスがあって、単に近い語を当てるだけでは不十分だった。読者が当時の雰囲気を感じられるよう、現代語の親しみやすさと古風な公式語の混在を意図的に作り出した。『永遠の0』の訳例に見られるような時代考証的な配慮が役に立ったが、こちらはもっと内面的で黙示的な語りなので、別の技術が必要だった。

語調の機微、短いフレーズの力、沈黙と断絶の扱い。この三つを常に天秤にかけながら、できるだけ原文の残響を日本語で再現することをめざした。それが訳す者の愉しみでもあり苦しみでもあった。
Quinn
Quinn
2025-10-30 11:30:53
翻訳作業を始めたとき、まず目立ったのはタイトルが持つ二重性だった。ドイツ語の原題 "Im Westen nichts Neues" は軍報告の乾いた文言でありながら、作品全体の皮肉と空虚さをすぐに象徴している。日本語訳の古典的な『西部戦線異状なし』は公式通達の響きをよく伝えている一方で、作者の抑えた諷刺や虚無感をどのように保つかは別問題だと感じた。

文章のトーンと語彙選びに関しては、現代日本語でどう生かすかが悩みどころだった。原文の短い、切れのある文と軍隊のスラング、兵士同士の粗野な親しみを、あまり教科書体にならずに再現する必要がある。例えば "Kameradschaft" の訳語一つとっても「同志」「仲間」「連帯」など選択肢が多く、文脈で微妙に異なる温度を出す。さらに、戦場の擬音や体感を表す表現は直訳するとくどくなるため、読者が肌で感じるように省略と付け足しを織り交ぜた。

長文と句読点の扱いも難題だった。トルストイの『戦争と平和』のような叙事詩的語りとは違い、ここでは日常の断片が断続的に投げ出される。私は文のリズムを何度も調整して、原作の息づかいを損なわないように心掛けた。最終的には、公式の冷たさと個々の人間性が同居するバランスが鍵だと確信している。
Ruby
Ruby
2025-10-31 01:07:10
中でも個人的に刺さった表現は冒頭の一文の含意だった。『西部戦線異状なし』の冷たい公式表現は、個々の兵士の生死の物語を無言で打ち消すように機能している。この一行をどう翻訳するかで訳文全体の受け取り方が変わるため、直訳の硬さと意訳の情緒性の間で悩んだ。

また、作者が使う身体感覚を通じた言葉――匂い、味、触覚に託した比喩――は、単語単位で訳すと効果が薄れる。私は言葉の選択を慎重にして、感覚が直接伝わる短い表現を優先した。さらに、戦場で交わされる短く荒い会話や罵声の翻訳では、日本語のリズムに合わせて語尾や語順を調整する必要があった。

文体の簡潔さと空虚さを保つ挑戦は、他の青春的反戦小説、たとえば『ライ麦畑でつかまえて』とはまた別種の難しさだと感じる。結局、訳す者としては原作の沈黙と余白を尊重しつつ、日本語の中で痛みを鳴らす言葉を見つけるしかないと落ち着いた。
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4 回答2025-10-08 13:00:09
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5 回答2025-10-20 05:46:31
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7 回答2025-10-19 11:53:57
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4 回答2025-10-09 02:36:17
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