十年分の裏切りと愛の終わり家が火事になった時、川上景太(かわかみ けいた)はドアを開けさえすれば私を助け出せたはずだったのに、地下室に閉じ込められた私を無視し、まっすぐに二階へと駆け上がっていった。
「悦子は体が弱いから、先に彼女を助け出にいく!」
彼が私を見捨てるのは、これで三度目だった。
一度目は私たちの結婚式だった。彼は清水悦子(しみず えつこ)からの電話に出ると、あっさりと立ち去ってしまった。
二度目は私が交通事故で流産した時だった。彼は失恋した悦子に付き添うため、一日中姿を消してしまった。
私が救出された後、景太は救急隊員たちに怒鳴り散らしていた。
「お前ら、人間の言葉が分からないのか?!悦子の顔が擦りむけたんだ。彼女を先に病院へ運べ!」
けれど、あの女の顔には、ほとんど傷一つ見当たらなかった。
私は冷静に焼けただれて変形した指輪を外し、景太の顔に向かって投げ出した。