本棚を眺めていたら、次に何を読むかで無駄に時間を使う自分に気づいた。
推理小説が好きなら、まずは形式美を愉しめる古典に立ち返るのがいいと思う。おすすめは英国の老舗、'そして誰もいなくなった'。巧妙な伏線と人数制限された舞台設定がもたらす緊張感は、謎解きの基本を学ぶのにうってつけだ。
本作は人物描写とプロットのバランスが絶妙で、犯行の動機やアリバイの扱い方を丁寧に観察するクセがつく。難解な現代ミステリーに慣れている人でも、その緻密な構成に唸るはずだ。翻訳によってニュアンスが変わることもあるから、解説付きの版を選ぶと読み比べが楽しめる。
読み終えたら、密室や閉鎖空間のトリックに注目して別の現代作に移ると、古典と新作の対比がより面白くなる。じっくり謎を解く楽しみを再発見できる一冊だ。