ふだん目を向けない背景小物が、後で重要になることがしばしばある。隠者の伏線を追うときは、時間軸を意識して小さな手がかりを順に繋げていくのが有効だと私は考えている。
まず第一段階として、初出時の描写をメモする。登場時の服装、携行品、居場所(山奥の小屋、研究室の片隅など)、聞かれたくない過去を匂わせる単語。第二に、繰り返し現れるモチーフをチェックする。特定の色、鳥の鳴き声、古い歌などは
暗喩として蓄積される。第三に、他者の語りの矛盾を拾う。周囲の証言と本人の主張が食い違う場合、隠者の本心や過去が隠れていることが多い。
こうした手順で観察すると、遠く離れて暮らす賢者が実は物語の鍵だったりすることに気づく。『スター・ウォーズ』の隔絶された師匠の描写を思い出しつつ、細部を追う習慣は私にとって楽しみのひとつになっている。