翻訳と意訳は言葉を別の言語に移し替える際の異なるアプローチだ。翻訳が原文の構造や単語をできる限り忠実に再現しようとするのに対し、意訳は作品の持つニュアンスや感情を優先する。例えば、'The moon was a ghostly galleon'という英文を直訳すれば『月は幽霊のようなガレオン船だった』となるが、日本語の詩的な文脈では『月は幽霊船のように漂っていた』と表現した方が情景が伝わりやすい。
この違いはアニメの字幕翻訳で顕著に現れる。『鬼滅の刃』のキャラクターが発する『うざい』を英語圏の視聴者向けに『Annoying』と訳すのは直訳だが、『Get lost』と訳せばキャラクターの苛立ちがよりダイレクトに伝わる。文化や言語の溝を埋めるためには、時として文法の正確さよりも感情の正確さが重要になる。
文学翻訳の世界では、村上春樹の作品を読むと訳者によって文体の印象が大きく変わることに気付く。同じ原文でも、語順を変えたり比喩を置き換えたりすることで、作品の空気感が全く異なって見えるのだ。翻訳は科学に近く、意訳は芸術に近いと言えるだろう。