裏切られた果て、幸せへ社長である夫、西園寺恭也(さいおんじ きょうや)は、「奇病」にかこつけて堂々と不倫をしていた。彼の言い分はこうだ。
心は妻を選んでいるが、体はインターン生の相沢美奈(あいざわ みな)を選んでしまう。
そのため、彼は毎月十日間、美奈の元へ「治療」に行き、家を空けていた。
「遥、医者が言うには、これは美奈に対する抗えない生理的依存なんだ。体が本能的に美奈を求めてしまうが、僕が愛しているのは遥、君だけだ!」
私、一之瀬遥(いちのせ はるか)を信じさせるために、彼は芝居がかった誓いを立て、時にはナイフで自らの肌を切り裂いてまで、その「本心」を証明してみせた。
私は涙し、結局は情に負けて許してしまった。
しかし、妊娠後期のある日、強風で落下した看板に私が直撃され、お腹の子を失った。恭也に電話をかけたが、彼は一度も出なかった。
その直後、私は美奈のSNSを見てしまったのだ。
【ついにママデビュー!これからは幸せな三人家族!】
写真の中で、恭也は慈しむような表情で美奈のお腹を撫で、手には彼女のエコー写真を誇らしげに持っていた。
そうか。恭也が心も体も捧げていたのは、最初から美奈だったのだ。
その瞬間、私は私たちの結婚生活が完全に終わったことを悟った。