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幼なじみに奪われた夫と、灰になった私の心

幼なじみに奪われた夫と、灰になった私の心

夫の西岡英吾(にしおか えいご)が幼なじみの及川空音(おいかわ そらね)のために家を飛び出したのは、これで19回目だった。 ある日、私は英吾の引き出しに、2枚の映画のチケットがひっそりと挟まっているのを見つけた。 「サプライズにするつもりだったのに」 英吾は素っ気なく言った。 「先に見つけちゃったなら仕方ない。夜、映画館で待ってろ」 その夜、私・西岡絵里奈(にしおか えりな)は開演から終演まで、ずっと待ち続けた。 ――でも、英吾は来なかった。 帰り道、何気なくスマホをスクロールしていると、空音のSNSの投稿が目に留まった。 【映画には連れて行ってもらえなかったけど、花火を用意してくれたし……今回だけは、特別に許してあげる】 思わず顔を上げると、夜空の向こうで、色とりどりの花火が咲き乱れていた。 どうしてだろう。 今この瞬間、彼を愛し続ける気力が、底の抜けた器から水がこぼれるように、静かに消え去っていく気がした。
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彼が愛したあの心臓の鼓動は、私のものではない

彼が愛したあの心臓の鼓動は、私のものではない

私は先天性心疾患があり、19歳のとき、移植手術によって命をつなぐことができた。 その後、私は今の夫である神原準人(かんばら はやと)に出会った。 結婚して3年目、準人のスマホで消し忘れたメモを見つけた。 日付は、私たちが偶然出会った日のものだった。 メモはこう書かれていた。【見つけた。彼女の名前は浅草思美(あさくさ ことみ)だ。彼女の中に、その心臓が息づいている】 上にスクロールすると、別の女の写真があった。メモには雨音(あまね)と書かれていた。 メモの最後の行にはこうあった。【雨音、彼女の体で、君の心臓が動いている。君の代わりに、彼女がこの世の景色を見てくれる】 私はついに理解した。 準人が初めて私に偶然出会ったときの目の驚きは、一目惚れではなかったのだ。 プロポーズのとき流した涙も、私のためではなかった。 深夜、いつも耳を私の胸に当てて聴いていたのは、私の心拍ではなく、彼女のものだった。 今日、準人は帰宅が遅いが、いつものように私を抱きしめ、顔を私の胸に埋めた。 「やはり、君の心の鼓動が、一番安らげてくれる」 私は目を開けず、問いもせずにいた。 ただ、初めて気づいた。人の心の本音って、簡単に読めるものではないと。
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