「バレてるし」
執務室で書類に埋もれていたエルが顔を上げる。
「何が ? 」
「下手くそかよ。今、何時だと思ってんの ? 」
レイが再びドラゴンに乗り、グリージオに戻ったのは日が昇ってからだった。
「城内にいないって言うし、街の外れに飛龍が来てたって聞いたし……お前なんか隠してるよな ? 」
「そこまで聞くならもう知ってんだろ」
レイは不貞腐れたように椅子にひっくり返った。
「開き直るんじゃないよ」
「リラに会って来たんだよ」
「やっぱり。なんで連れて来ないんだよ、今どこにいるんだ ? 」
エルに聞かれてレイは天を仰いだまま両手で頭を抱える。
「……んだった」
「は ? 」
「はぁ〜〜〜……別人だった。中身が」
「……はあ ? 何 ? 何だって ? 」
一先ず、説明はリラがパーティから単独行動して離脱した時に遡った。
「離したはずのゴルドラに襲われて、リラちゃん一人で攻撃したんだろ ? 」
「それが、その時……あいつ油断して尻尾食らったんだよ。下に落ちてった……」
「うん。まず俺、聞いてないんだけど」
「全部説明できるか面倒だ。俺たちが振り落とされたのその後だし……大分距離は開いたとは思ってたんだけど、すぐに見つかると腹括ってたし」
「後出しの情報多すぎ」
「北方に標高の高い山脈があるだろ。なんかそこで二ヶ月、彷徨ってたってさ」
「…… ??? 」
「記憶を失くして」
「記憶っ !!? 今は !? 」
「時々リラに戻るらしい」
「……もっと分かるように説明しろよ」
事の深刻さを理解したエルがようやく立ち上がる。書類の隙間からほんの少しだけあった窓の光も遂に塞がった。
そのまま呆然とレイの話を聞き続け、エルも苦い顔をする。聖堂に何と説明すればいいのか。リラの社会見学はエルの許可、そして白魔術師であるシエルの報告書によって許されている。エルが同行していなか