Load of Merodia  記憶喪失の二人

Load of Merodia 記憶喪失の二人

last updateDernière mise à jour : 2025-09-07
Par:  神木セイユComplété
Langue: Japanese
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ドラゴン討伐中、空中戦から落ちたリラは、一命を取り留めるも記憶喪失となってしまう。パーティの仲間ともはぐれ、二ヶ月が経過した頃、拾われた村の酒場でステージに立つ『狐弦器』奏者のセロと出会う。リラの中で何かが覚醒し、即興での演奏を披露する事に ! リラの持つ魔法石は歌魔法の使える希少石だったのだ。セロの音色に依存したリラと 、リラの歌声に依存したセロ。 吟遊詩人としてのスタートを切るが、セロは極度の女嫌い。更に旅の資金0 !! 貧乏で純愛な異世界ミュージック︎生活。 更に元のパーティはスパダリ揃いの溺愛系ヒーロー。 リラは記憶のあった頃のメンバーの距離感とセロと旅をしてきた信頼度に悩み、溺れていくことになる。

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96
0.プロローグ
 銀の鱗の上。 翼竜に乗った仲間が叫んだ。「リラ !! 振り落とされんな !! 」「大丈……。っ !!? みんな、西 !! 別のがいる !! 」 シルバードラゴンにあと一息でトドメというところで、夕日の中に別のドラゴンのシルエットが見えた。「オスじゃねぇーの !? せっかく引き離したのに !! 」「戦闘が長引きすぎたな。シエル、回復薬は ? 」「もう無いよ ! とてもじゃないけど連戦できない ! レイ、どうするの !? 」「……っ。全員離脱用意。このドラゴン討伐は……諦めるしか……」 この時。 わたしは出来ると思った。 本当はパーティの全員に支えられてきた自信と実力だったのに。 それを過信したんだ。「カイ ! 双剣を貸して !! 」「はぁ !? 俺、魔銃は使えねぇよ ! 」「替えの装備あるでしょ !?  わたしがゴルドラの気を引く ! 討伐は続けて !! 」 一人、シルバードラゴンの背から魔法を伝い風に乗る。「風よ ! 」 風で弧を描く身体の先、ブーツから水蒸気の雫が光る。 ギィィィンッ !!  その回転した反動を利用して、敵意剥き出しの雄竜に思い切り刃を向けた時。頭部へ一撃、全力で打ち込んだのに、ゴールドドラゴンは更に鋭い牙をギギッと剥くだけだった。 自分の判断が間違いだと気付いた。「くっ、硬っ !! 」 剣が弾かれる。その直後聞こえた、不穏な風切り音。 ヒュオッと耳の側で鳴った後、視界の端に叩き落とそうとする尾の先が見えた。「リラァッ !! 」 反撃を受けて、魔法が切れる感覚。 真っ逆さまに落ちていく風の音。 冷たい空気。 視界の中で、ゴールドドラゴンがシルバードラゴンの背の上目掛けて火を吹いているのが最後の記憶。 その記憶だけを残して。 わたしは仲間の記憶を無くした。
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1.雪山のギルド
「浮かないね」 この人も知らない。結構、年上だよね ? でも……凄い腹筋と綺麗な歯。褐色肌が雪原地域のここじゃ、全員の目を惹いてる。凄く引き締まった腹筋なのに、釣り合わない程の大きな胸。 それに……ニヤッとしてるけど、嫌味がない笑顔だわ。「あんた、ずっと一人だよね ? この村に来た時から気になってたんだ」「え…… ? ……一人客なんて他にも……」 ギルドの酒場。 わたしは毎日ここに通い続けた。 もうドラゴンの上から落ちた記憶しかない。自分がどう生きてきたのかも、どんな武器を使っていたのかも思い出せなかった。「この辺り、結構討伐報酬高いしさ。良ければあんた誘うおうとしてたんだけど、毎日居る割りに湿気たツラしてるからさ」「……そうでしたか。実はパーティのメンバーが戻らなくて……」 ギルドにさえ出入りしていれば仲間だった人に見つけて貰えるかもしれない……そう思って毎日欠かさずここへ来てた。 いつかパーティの仲間が………… ?  仲間だった人…… ?  それも思い出せない。でもこの地帯は高レベルのモンスターしかいないし、女性一人の冒険者は稀だとみんなが言う。だから、きっと仲間はいるはず。「へぇ。そうなの ? はぐれて今日で何日 ? 」 こういう質問を受けるのは初めてじゃない。 わたしの装備が結構質がいいみたいで、実力を見込んで声をかけて来る人がいる。でも身体はもう、どう動けばいいのか覚えてない。「二ヶ月です」「二ヶ月ぅ !? そりゃ……あんた…………」 自分でもわかってる。 多分、置いていかれたか、全員殉職したかしかない。でも前者は絶対ない ! じゃあ、何 ? その人達はどうなったの ? 何もかも整理ができてない !「あ……ごめんよ。そんなつもりじゃ……」「いえ。討伐中の事故のせいで記憶が曖昧になってしまって……。空から落ちたみたいなんです。 今はもう戦えなくて。仲間の記憶も曖昧なんです……」「仲間って、連中の名前は ? あたし海の方からここに来たけど……」「実は、それも覚えてないんです……。 あ、申し遅れました。わたしリラ · ウィステリアです。ギルドのジョブプレートは持ってて」 木低札に名前と登録ギルド名。グランドグレー大陸発行の紋章が付いてるけど、グランドグレー自体が広大な土地過ぎてとてもじゃないけど出身地
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2.レオナとジル
「やっほーーー ! お姉さん ! エール二つお願い ! 」「かしこまりましたぁ」 う、凄い煙。と、お酒の匂い。 なんか想像と違いすぎる。 ……そういえばギルドに食堂は隣接してるし、独立した酒場に入るのは初めてかも。 天井が眩しい。 ここはランプじゃなくて魔石に光の魔法をチャージして使ってるのね……。 それにしても、この村にこんなに人がいたなんて。 冒険者じゃない女の子……踊り子よね。凄い……ギルドであんな綺麗な人見たことない。綺麗なドレス……。「あぁーん。会いたかったぁ〜ん」 こっちの女戦士が抱きついてるのは男性。胸元まであけたシャツに艶のある短髪。こんな人、昼間の村では見かけないのに……ここでお客さんとってるんだ。 完全に夜の世界。「さ、こっちこっち」「レオナさん、わたし……やっぱりこの空気は……」「大丈夫大丈夫。 こいつ、あたしの連れでジルっての」 ジルも愛想よくわたしを見上げて握手を交わした。「リラです」「ジル ! よろしく !  なになに ! レオナ、ギルドで女の子ナンパしたの ? 」「ばーか。違うよ。 この子さぁ、掲示板の子だよ。話したらやっぱり境遇がセロと似てると思って連れてきたんだ」 そう言って、ジルの隣にいた男性を指差す。 多分、年はわたしと同じくらい。 曇り空のような銀髪に陶器のような白い肌。着衣はなんの素材か分からないけどオールホワイト。なんだか生命力が儚げって感じに見える。「こいつはセロ。あたしも知らないんだけどさ。港町で知り合ったんだ。あんたと同じく、記憶ないの。 ねぇ、こいつと知り合いだったりする ? 」 セロと呼ばれた白い男性。 お互いにポカンと全身を見る。 でも知らない。見たことない人……だよね。「いいえ。すみません」「俺も……。そもそも女性は苦手だし……」 苦手…… ? じゃあ、絶対違うじゃん。目も合わせようともしないもん。 ピンと来ないし、やっぱり思い出せない。「流石にそんな偶然はないだろ」「記憶が無いんだもんなぁ〜。身体の感覚も違うだろう ? でもいいじゃないか、確認するくらい。 リラ、セロは口数少ないんだけど、何故か狐弦器の扱いだけは達者でね」 狐弦器。 大牙狐の髭やしっぽと木で作られた弦楽器だよね ? ……あれ、わたし……。記憶が無いのに、楽器は覚え
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3.セロ
「始まるね。あいつにとっても初めてのステージだ」 一部の客席がステージを見上げる。 ドクンッ !! 「……っ !! 」 セロがステージに上がった時、心臓が跳ねる。 この感覚って何 ? 一挙一動……なにか分からないけど……既視感 ? まさか。 それは無い。 わたしは彼を知らない。 セロが弓を大きく振りかぶり、第一音を鳴らす。たった一つのチューニング音。 それだけで酒場全体の時が止まる。比喩じゃない。みんなセロを見上げて次の音に耳を立てている。 透き通るような音色。 女性嫌い ? 本当に ? そんな精神状態でステージって立てるものなの ? 荒くれ者みたいな人も多いし、異性と遊びに来て楽しんでる人も多いのに、音楽って聞いて観て貰えるものなの ? セロの狐弦器が鳴る。 唸りをあげるという方が強い。 音が重い……。切なくて、地を這うようなスローなメロディ。 シンプルに言えば、暗い曲だよね。 でもこの曲の雰囲気。 嫌いじゃない。「……」「……無理だよ……」 舞台上からわたしへの、セロの鋭い視線。さっきまでは目も合わせなかった癖に。 でも、分かるよ。 あいつ。わたしを探ってる。音楽の好み ? それともステージへ上がる意思 ? 冗談じゃない。わたしは冒険者。吟遊詩人じゃないもの。 でもこの衝動は何 ? 巧みにさばかれるピッチング。 弓のテンポが上がる。 もっと。 もっと聴きたい 。 側で永遠に。 この音色は……ずっと聞いていられる。「来たな」「……自分でもわからないの」 わたしは、気がついたらセロのそばにいた。 歌いたいとかじゃない。でも、この音色を側で聞くにはわたし以外にいない。 いないはず。 この思いってなに ? 「思い切り声量あげて。音は合わせる」 出来る。何故 ? 分からないけど、わたしならセロの音楽に見合った歌を当てられる。根拠の無い自信。 大きくブレスを挟むと、思いのままに喉を震わせた。「うぉ〜 !! いいぞぉ〜 ! 」 酔ったおじさんが拳を突き上げる。その場のノリでも
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4.雪原の旅立ち
 無理なんじゃないかな。  どちらかって言うと無理じゃなくて、絶対無理なかって。「よし、村長の紹介状持ったな ? 」 天気は晴天 !   降り積もった雪が真っ白で、目がチカチカするくらい日光を浴びている。すぐ側には砕いた氷のような雪山が連なってる。  村を出て道を川沿いに歩けば麓の村に着く。 とは言え、記憶のないわたしにとって初心者の雪中行群だよ。しかも問題はそれだけじゃない。「う……。あの……流石に今日から急に二人きりって無理があるんじゃないかと思うの」 レオナの勢いに乗せられて、今日からセロと二人で旅をする事になった。  なんで ?   いえ、わたしが知りたいくらい。「一箇所に留まってるより、あちこち動いた方がいい ! 掲示板に張り紙して仲間を探した方が絶対早いって。  掲示板の情報は、まとめて情報屋が各ギルドに配り歩くシステムなんだから、いずれ仲間が見たら気付くだろ ? 」 聞きたいのはそっちじゃない。「セロとあの夜の後、一度も話してないんですよ ? 会うの二回目が出発当日って ! 魔物がいるような地域で外に放り出されるなんて ! 気まずいじゃないですか ! 」「いやいや。あいつは何回顔合わせても気まずいからさ。どーせ喋らないし。  あいつはそういう……草 ? とか〜……ん〜小動物 ? とか、そんな風に見てればいいでしょ。無害よ無害 ! 」 必要な物は辛うじて揃ってたからいいとして、まだ見ぬ「カイさん」の双剣も持った。でも魔法用の魔石は使い方が思い出せないし、戦闘能力は皆無に等しいわたし。  それから……歌魔法の魔石。  装備の中、胸元に光る青い煌めき。歌った時は確かに金色だったのに。この詳細も全く分からない。「大体、セロの方が歌の旅に出ようってあんたを指名して意気込んでる訳だしさ。  いやぁ〜、あたしもジルも最初はびっくりしたくらいだよ。あいつにそんな自立心あったんだってさぁ〜。  ま、変な下心を持つタイプじゃないと思うよ」「会話も成り
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5.DIVA
 まず通常の魔法石の知識よね。同じならちょっと安心。「魔法使いは『魔石』……地方によっては『魔法石』を六つ持つ。六芒星の紋の上に、契約した精霊から魔石を貰って使う。  合ってる ? 」「俺もそう聞いてる。でも魔法石、見た事なかった。ギルドでも魔法使いって週に一人見かければ運がいい方ってジルが言ってた」「確かに、あのギルドにも魔法使いっていなかったな。  わたしはベルトに付いてるよ。コレ」 インナーを捲ってベルトの六芒星を見せる  た。「ヒッ !! 」 セロは清流沿いの道中、巨大な岩石に手を付いて震え出した。 何もしないよ ! 「……ねぇ。会話の流れ的にちゃんと見ようよ」「急に腹を出すから何事かと……」 何事でも無いの ! 「続けるね ?  武器屋のおじさんに聞いたら、タリスマンが一つに、四個が火属性、一個が水属性なんだって。火に全振り状態なのが意味わかんないけど……まぁ、この六芒星が無いと魔法は発動しない仕組みだよね ? 」「ああ。そう。  なんで歌の魔石は単体で使えたのかって聞きたいのか ? 」「分かってんじゃん。教えてよ」「……。見てもいい ? 」「うん」 わたしは首からネックレスを取り出すと、その石をセロの手に乗せる。「……〜〜〜」「え !!? なんか首とか顔……急に湿疹出てるけど…… ? 」「石が体温で生暖かくて、ゾッとした」「……そう」 わたしだって生きてるんだから、仕方ないよ。  直接触れた訳でもないのに……。た、確かに今の今まで胸の間にあったけど……。「これは希少石で『DIVA』って呼ばれてる。名前のまま、歌姫の石」「ディーヴァ……」「産出地不明。ただ伝承は残ってて、石が採掘された時、その国は極めて不安定だった。最初はなんでもない石だったけど、採掘場の男の一人が持ち帰り、研磨すると綺麗な青色の輝石だった。男は自分の娘に石を持たせると、娘は突然次の日から大人たち全員を歌一つで魅了し、やがて王家の人間まで上り詰めた。  この石は……持ち主を意のままに歌人にし、聴く全てを虜にする呪いがあるらしい。  そんな伝承がある」「呪い…… ? こないだ聴いてたお客さんはなんともなかったけど……暗示みたいな事なのかな ?  それにしても、おとぎ話みたいな伝承だね……。セロはそういう話、他にも覚えてる
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6.詠唱
 太陽が雲にかかり、白く光る。  雪の反射でチカチカしなくて、このくらいが歩きやすい。  手付かずの綿のような雪が真ん丸と河原の岩に乗っている。  温薬樹と言う木を煎じた物を持たされて来た。その煮出す前の物も。これは人間の体感温度を調整するもので、雪国では重宝されている。飲むだけで寒さを体感しにくくなるほど体温維持が出来る。わたし、こういう知識は残ってるんだよね……。他の雪国にも、旅した事……あったのかもな。  セロは相変わらず無言モード。  でもこれが彼の普通だから、もう既に慣れてきた。さっきの会話もそうだけど単純に不器用なんだな。「出発が昼過ぎだったし、今日は早めに場所を考えないとね。きっとこの雪山じゃあ、暗くなるのも早いもん」「ああ。麓の村まで早い人でも一日はかかるのらしいからな。  そういえば、魔法で焚き木に火とか……出来る ? 」「無理無理。魔法の使い方覚えてないもん」「あ、そうか……。大丈夫だ。火打ち石は持ってるし。食料は ? 」「遭難してもこれ一本みたいなクッキーをね。村長の奥さんに貰ったよ」 袋から取り出して見てみるけど、どうにも成人のわたしたちが満足するような量じゃない。  そばの清流を見ると薄氷の隙間から魚影が見える。「あの魚……釣れないかな ? 」「前にジルがやってたけど、釣りは慣れないと難しいらしい。一日粘って釣果は一匹だったよ。レオナが勝ち取って……あの時はすごく怖かった……」「あの二人って……」「多分、網か何かで仕掛けを作らないと無理だ。素人の垂らした餌なんか見向きもしない。  俺、なんか食えそうなもの探してくる」「え、最強クッキーじゃ駄目かな ? 」「それはいざと言う時の物だろ ? 」 いざと言う時……に、なりたくないけど。「分かった。じゃあ、わたし火を起こしておく。火打ち石貸してくれる ? 」「そうしてくれ。戻る時も目印になってありがたい」 セロはわたしに剥き出しの火打ち石を渡すと、藪の中に入ってい
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7.混濁
「呪文無しで魔法を…… ? 」 焚き木を目の前に、なかなかお肉に手が伸びない。 でも結局、セロに内緒にする訳にはいかないと思った。「わたし……魔族だったりするかも……」「かもな」 セロは頷いて、焼けたウサギにかぶりつく。「そんな簡単に…… ! 」「だって。今、悩んでも仕方ないだろ。それに魔族って見た目は人と同じらしいじゃん。言わなきゃバレないし、なにか不都合あるの ? 」「……ち、違う。そうじゃなくて !  セロは魔族かもしれない人と旅するようになるんだよ !? 」「魔族ってなにかやばいのか ? 」「え…… ? 」 だって魔族だよ ? 魔王のお膝元として栄えた黒魔術を使う一族。そんなのが道中、王国なんかで身バレしたら……死刑に……。「魔族って精霊魔法も使うのか ? 」 言われて見れば、わたしは火の水の魔石を持ってるから、精霊と契約してるって事だよね。 魔法石を手に取り確認する。 魔力を感じるし、契約してなかったらただの石に見えるはず。「使えると思う……」「魔法の使い方をはっきり思い出した訳じゃないんだし、考え込むのは早いんじゃない ? 」 そうかも。 もしわたしが魔族だったとしても、魔王の住む地に帰ろう ! とは、ならないもんね。「歌出来ればそれでいい」 安易な……。でもちょっとホッとする自分がいる。「そうだね。考えすぎも良くないかも」 焼けた肉を火から外し頬張る。「美味しい !  セロは弓使いなんだね。結構上手いの ? 」「どうかな。狙った時、いつ矢を摘んだ指を外
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8.魔銃の戸惑い
「リラ !! 」 薄らと意識が戻る。い心配そうに覗き込むセロの顔が見えた。「セロ……わたし……」 なんだっけ ? どうしてここにセロがいるの ?  そうか……後からわたしを見付けに来てくれたんだ……。「怪我は !? 」 怪我 ?  凄い剣幕……頭が追いつかない。 わたし、寝てたんだっけ…… ?  なにかの不快感で自分の手を見る。そこには見慣れない銃が握られていた。「きゃっ !! 」 思わず放り投げ、そして周囲の異常に気付く。 頭蓋や胴体の吹き飛んだ人の残骸。「…… !! ち、違う ! わたしじゃない ! 」「いや、お前が銃を手に……」「わたしじゃないんだってば !! 」 そうだ ! 何かが !!  誰かがわたしの中にいた ! 「リラ、もういい。出よう」「セロ……でも……」 セロは狐弦器を背負ってた。そういえば、最後にそれを見た記憶がある。その後、記憶が途切れ途切れに……。「山賊……よね ? これ、人だよ ? わたしが…… ! わたしがやったの !?  」「多分そう」 わたし、人を殺したの ? 「山賊の根城に女一人誘拐された。正当防衛だろ」 本当はそんな簡単な問題じゃないよね。 でもセロはわたしの肩を持とうとする。「覚えてない ? 」「途切れ途切れなの。 テントにいたら物音がして、頭を出したら捕まっちゃった。
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9.狂曲
 セロの弓が滑る。 音が………… !!  次々に身体を抜けて行く。 スピードナンバーなのにちっとも嫌らしい早弾きに感じない爽快感。 これに合う歌を……。 いける。無理に伴奏に合わせなくても歌が始まりさえすれば主旋律を握れる。 大きくブレスをし、第一音をロングトーンから始める。 鳥が飛ぶような颯爽感とぴょこぴょこ歩く様な可愛らしさ。「〜〜〜っ !? 」 セロの狐弦器が転調した。 理解しろ ! 大丈夫。このメロディも決して奇抜じゃない王道。 なんなの、この歌いにくさ ! さっきまでのユニークなイメージが無くなった。 イメージして !  遥か遠くへ。いずれは飛び立ち、知らない国の空を優雅に飛ぶ、力強い自然生物。その眼に映る景色はどんなに美しいだろう。「はぁ……っ ! 」 何とか間奏まで歌いきる。 どこまでが休符 ? 演奏はまだまだ進んでるし、止まる気配も無い。間奏だって決めているのはわたしだけ。 次に入るタイミング……急げ !  「……」 セロの鋭い視線が怖い。 自分の手元を見てはいるけれど、わたしの様子を伺ってるのは言うまでもない。 早く再開しないと。分かっていても目紛しく変わる旋律。違和感が無い、完璧に研ぎ澄まされ、練られたメロディ。この分だと尺もありそうだし、歌いきるよりも分けてシーンを作れば良かった。 また一度に歌いきったら次こそ、どん詰まりになるのは言うまでもない。「……」 どこから入る ?  いえ、それはDIVAが教えてくれるはず。 流れていく旋律を聴き続け、その瞬間が来た。「っ……… !! 」 声が
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