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Home / 恋愛 / あの夜を捧げて笑われたけど、私はMITに合格した / 第5話

第5話

Author: スカーレット・フレイム
北極では、わざと自分を忙しくさせた。

アヴァと一緒にオーロラを見に行ったり、観測船に乗ってクジラやアザラシを追いかけたり。

スケジュールをぎっしり詰めて、空白の時間に過去を思い出さないようにした。

もちろん、イーサンが要求していたように、彼の連絡先を元に戻したりなんてしていない。

でも――アヴァはそばにいて、時々彼とシルヴィアのSNSを見せてきた。

彼らはスイス旅行を楽しんでいるようだった。

だけど、不思議だった。

イーサンって、本来SNSなんて滅多に更新しない人だったのに。

最近では、ほぼ毎日のように投稿していた。

アレッチ氷河を上空から撮った写真。

サン・ピエトロ大聖堂の塔の上から見た景色。

私はもう、彼の投稿を逐一チェックするようなことはしなくなっていた。

だけど、それでも何人もの友だちが「シンシアはなんでイーサンと一緒にスイス行ってないの?」と聞いてくる。

写真の中でイーサンの隣に映るのが、私じゃなくてシルヴィアになっていることは、嫌でも目に入ってくる。

かつて、その場所にいたのは、私だった。

それを説明できなくて、「今回はアヴァと先に約束してたから」とごまかすしかなかった。

誰かがイーサンの名前を口にするたび、胸の奥がきゅっと締めつけられる。

でも、逃げるのはやめた。

この痛みは「断ち切るための禁断症状」――それが過ぎれば、私はきっと、自由になれる。

それから私たちは、丸二ヶ月、連絡を絶ったままだった。

イーサンと知り合って以来、これほど長い沈黙は初めてだった。

今まで、どんなに喧嘩しても――長くても三日。結局いつも、私のほうから折れていた。

でも今回は違った。

「時間がすべてを癒してくれる」って言葉を、私は初めて信じられた。

北極の壮大な自然の中で、私は一番辛い時期を乗り越えられた気がする。

そして気づけば、イーサンのことが頭を占める時間はだんだん減っていって、代わりに今この瞬間を楽しめるようになっていた。

――そんなときだった。

イーサンから、また電話がかかってきた。

「シンシア、お前……なんで俺に隠れて北極なんか行ってんだ?前に、一緒にオーロラ見に行こうって話してたよな?」

その声には、かすかな不安がにじんでいた。

イーサンが私に対し
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