わたしなんかより、彼のほうがよっぽどモデル向きだと思う。
「おれの顔、なんかついてる?」
また、まじまじと見つめてしまった。
恥ずかしさで顔が赤くなる。
でも彼は見られるのに慣れているみたいで、とくに気にする様子もなく、こっちだよ、とすぐに後ろを向いて歩きだした。
建物は古い日本家屋で、表から見ると、まるで写真スタジオらしくなかったけれど、玄関から短い廊下を通ってふすま戸を開けると、中はまるで別世界だった。
天窓から陽光が射しこむ明るい室内は、和風の造りを生かしながらも、とてもモダンでため息が出るほど素敵なものだった。
床は無垢材のフローリング。
裸足で歩いたら気持ち良さそう。
表からは2階建てに見えたけれど、フロア全体が吹き抜けになっている。
奥の壁面は白一色で、近所の写真館で見かけたことがある機材がたくさん置いてある。
南面はガラスの引き戸になっていて、庭が眺められるようになっている。
写真スタジオと言われて、勝手に無機質な場所を想像していたけれど、ここは居心地のいいカフェみたいな空間だった。
気分をリフレッシュしてくれそうな柑橘系のアロマの香りも漂っている。
「あの……これ」
「ちゃんと持ってきてくれたんだね。サンキュ。じつはまだローン払ってる最中だったから、本当言うと冷や汗もんだったんだ。戻ってこなかったらどうしようってね」