翌朝、彼は私が独占していたせいで自分のベッドでは寝てなくて、来客用の布団で寝ていた。
が……同じ部屋だった。
「ごめん…私がベッドを使ってたから。
起こせば良かったのに。
それに、これだけ大きいベッドなんだから…隣に寝ればよかったのに。」
「何言ってるの。侑さん。
同じベッドに寝たりしたら、俺が我慢できなくなっちゃうでしょ?
それとも襲って欲しかったんですか?」
昴生はなんだか意地悪そうに笑う。口調がドSっぽい。
ええ……?私と彼の間に、そんな男女の関係が生まれるだろうか。
だけど思い返せば確かに彼はセッ……
妙なことを思い出して私は口籠る。
それからまた慌ただしく病院に連れてかれて、やっと胃の不調の原因を突き止められた。
ちなみに昴生は帽子にサングラスにマスクという鉄壁の変装をしていた。逆に近寄りがたい感じに。
それで…また帰ってきたのはやっぱり彼のマンションで。
「侑さん。遅くなったけどお昼にしましょう。
薬も飲まなきゃだし、少しは胃に何か入れてくださいね。
人間、健康でいるにはまず食事からです。」
昴生はなんだか、言う事もやる事もすごくしっかりしてた。
何もかもに戸惑っている私に対して、爽やかに笑いながら規則正しい生活を促した。
なぜか2人分ある新品の歯ブラシにコップ。
恋人とかのではないだろうか。申し訳なく思いながら使わせて貰った。
久しぶりに誰かと過ごす時間。
誰かと食事をする瞬間。しかも昴生が作った料理を。
消化に良さそうな柔らかいロールパンに、スクランブルエッグ、ヨーグルトなどが用意されていた。
潰瘍の胃にはありがたい食事。
「昨夜はありがとう………その、急に電話してごめんね。」
「本当に悪いと思ってるなら、大人しくうちで面倒見られて下さいよ。」
ロールパンを口に運びながら、私を見てまた無邪気に笑う。
「え……?何?」
「俺言いましたよね。侑さんが死にたくなったら、侑さんの残りの人生を下さいって。
あの時がそうだったんでしょ?
ならもう覚悟はできたはず。
侑さん。俺がこの先の侑さんの一切の面倒を見ます。
だから俺に飼われて下さいね……?」
目の前で腕を組み、恍惚とした表情で私を見つめる彼。
ちょっとこの後輩は。この前から随分とおかしいかも知れない。