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人気俳優に飼われる女優

Author: Kaya
last update Last Updated: 2025-06-25 20:00:00

 だけどあの瞬間に死を望んだ自分も、大概おかしくなってるとは思う。

 「飼うって…具体的には何するの?」

 この前言ってた一緒にご飯食べたり、映画観に行ったりっていうニュアンスとはまた違う気がする。

 女性を飼う…つまり飼育とは自分好みに仕立て上げたり調教したりするという意味だろう。

 どちからというと、後ろめたい意味で使われるような。

 ごくりと喉を鳴らして、昴生を見つめた。

 「そうですね。まずは病気を治しましょう。

 ピロリをやっつけましょう。

 俺といる時は、ただひたすらにダラダラしましょう。

 いない時もダラダラしてください。

 朝昼晩俺が手料理を作ってあげます。

 できない時はデリバリーを頼みます。

 掃除も洗濯も俺がします。

 できない時は家事代行サービスに来てもらいます。

 だから侑さんはこの家で自由に暮らしてみて下さい。」

 ……………………え?

 「できないと言ってもやるんです。

 侑さんは次の仕事が決まるまで、ただダラダラと過ごすのが仕事です。

 好きなものいっぱい食べて、ガリガリな侑さんじゃなくて、3食昼寝付きでゴロゴロして、太ってしまえばいいんですよ。」

 「え……え?

 そんな事出来るわけないし、それに私には自分のマンションが。」

 「ああ。あそこは今朝早く不動産に電話を入れておきました。

 半年分の家賃を入金しておいたので、家賃の心配はしなくて大丈夫ですよ。

 必要なら一緒に荷物を取りに行きます。」

 「半年分って結構な額だよ…?どうしてそんな……それにあそこには熱帯魚が」

 「ここに運んでくればいい。侑さんと一緒に俺が面倒を見ますので。」

 「どうして……そこま

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     だけどあの瞬間に死を望んだ自分も、大概おかしくなってるとは思う。 「飼うって…具体的には何するの?」 この前言ってた一緒にご飯食べたり、映画観に行ったりっていうニュアンスとはまた違う気がする。 女性を飼う…つまり飼育とは自分好みに仕立て上げたり調教したりするという意味だろう。 どちからというと、後ろめたい意味で使われるような。 ごくりと喉を鳴らして、昴生を見つめた。 「そうですね。まずは病気を治しましょう。 ピロリをやっつけましょう。 俺といる時は、ただひたすらにダラダラしましょう。 いない時もダラダラしてください。 朝昼晩俺が手料理を作ってあげます。 できない時はデリバリーを頼みます。 掃除も洗濯も俺がします。 できない時は家事代行サービスに来てもらいます。 だから侑さんはこの家で自由に暮らしてみて下さい。」 ……………………え? 「できないと言ってもやるんです。 侑さんは次の仕事が決まるまで、ただダラダラと過ごすのが仕事です。 好きなものいっぱい食べて、ガリガリな侑さんじゃなくて、3食昼寝付きでゴロゴロして、太ってしまえばいいんですよ。」 「え……え? そんな事出来るわけないし、それに私には自分のマンションが。」 「ああ。あそこは今朝早く不動産に電話を入れておきました。 半年分の家賃を入金しておいたので、家賃の心配はしなくて大丈夫ですよ。 必要なら一緒に荷物を取りに行きます。」 「半年分って結構な額だよ…?どうしてそんな……それにあそこには熱帯魚が」 「ここに運んでくればいい。侑さんと一緒に俺が面倒を見ますので。」 「どうして……そこま

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     翌朝、彼は私が独占していたせいで自分のベッドでは寝てなくて、来客用の布団で寝ていた。 が……同じ部屋だった。 「ごめん…私がベッドを使ってたから。 起こせば良かったのに。 それに、これだけ大きいベッドなんだから…隣に寝ればよかったのに。」 「何言ってるの。侑さん。 同じベッドに寝たりしたら、俺が我慢できなくなっちゃうでしょ? それとも襲って欲しかったんですか?」 昴生はなんだか意地悪そうに笑う。口調がドSっぽい。 ええ……?私と彼の間に、そんな男女の関係が生まれるだろうか。 だけど思い返せば確かに彼はセッ…… 妙なことを思い出して私は口籠る。 それからまた慌ただしく病院に連れてかれて、やっと胃の不調の原因を突き止められた。 ちなみに昴生は帽子にサングラスにマスクという鉄壁の変装をしていた。逆に近寄りがたい感じに。 それで…また帰ってきたのはやっぱり彼のマンションで。 「侑さん。遅くなったけどお昼にしましょう。 薬も飲まなきゃだし、少しは胃に何か入れてくださいね。 人間、健康でいるにはまず食事からです。」 昴生はなんだか、言う事もやる事もすごくしっかりしてた。 何もかもに戸惑っている私に対して、爽やかに笑いながら規則正しい生活を促した。 なぜか2人分ある新品の歯ブラシにコップ。 恋人とかのではないだろうか。申し訳なく思いながら使わせて貰った。 久しぶりに誰かと過ごす時間。 誰かと食事をする瞬間。しかも昴生が作った料理を。 消化に良さそうな柔らかいロールパンに、スクランブルエッグ、ヨーグルトなどが用意されていた。 潰瘍の胃にはありがたい食事。 「昨夜はありがとう………その、急に電話してごめんね。」 「本当に悪いと思ってるなら、大人しくうちで面倒見られて下さいよ。」 ロールパンを口に運びながら、私を見てまた無邪気に笑う。 「え……?何?」 「俺言いましたよね。侑さんが死にたくなったら、侑さんの残りの人生を下さいって。 あの時がそうだったんでしょ? ならもう覚悟はできたはず。 侑さん。俺がこの先の侑さんの一切の面倒を見ます。 だから俺に飼われて下さいね……?」 目の前で腕を組み、恍惚とした表情で私を見つめる彼。 ちょっとこの後輩は。この前から随分とおかしいかも知れない。

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     侑⃞さ⃞ん⃞は⃞大⃞人⃞し⃞く⃞、⃞俺⃞に⃞飼⃞わ⃞れ⃞て⃞下⃞さ⃞い⃞ね⃞。⃞ あのホテル街で昴生に会った後————— 不思議な事に体の震えが止まった。 寒さより。悴んだ手より。 夜の闇に白い息が浮かぶ。 全神経が目の前の彼に持ってかれてく。 そんな私に昴生は怒ったかのように近付いてきて、肩に手を回した。 キスを………… されるのかと思うくらいの至近距離。 照明に照らされた綺麗な瞳が、光を受けてキラキラと輝いていた。 こんな夜の闇にまで、美しい姿を見せなくたっていいのに。 「侑さん。具合が悪いんですね? まずは————病院に行きましょう。 話はそれからです。」 なんでかな?私の方が年上なのに。 彼の前で私は体調管理が下手くそな、手の掛かる年下みたいだった。 「胃潰瘍《いかいよう》だったんですね。 しかも侑さん…胃の中にピロリ菌なんか飼ってるんですもん。 良かったですね。ちゃんとした原因が分かって治療もできて。」 「……そうだね。驚いた。まさか私も自分がピロリ菌を飼ってるとは。」 昨夜とは違ってなぜか嬉しそうに声を弾ませている昴生に、薬を飲んだ後またベッドに横になるようにと言われた。 「侑さん。言っときますね。 もうピロリ菌は飼わなくていいんで、侑さんは大人しく、俺に飼われて下さいね。」 「ええ………?」 ベッドの脇に座り、満面の笑みを浮かべる彼。 全然落ち着かない——— だってここは彼の住むマンションで、ここは彼のベッ

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     彼の手を振り解くようにして、私はまた台本に目線を移した。 「…それだけの気持ちを知ってるなら大丈夫だよ。  演技が始まったら、今の気持ちを思い出したらいいと思うよ。  好きな人に会えた瞬間にドキドキしたり、抱きしめたくなったりするその気持ちを。  その瞬間にセリフは自然と出ると思う。  ……そして春希は冬美と目が合った次の瞬間に、気持ちの全てを否定される。  自分に気づいてくれない片想いの相手に……  その時に湧く春希の感情は、どんなものだと思う?」 「———辛くて…悲しい。  やるせない。」 「うん。そう。そうだよ。春希は絶望する。  長い事想っていた相手に裏切られた気持ちになる。  悲しい、何で?辛い。気付いて欲しい。  きっと春希は訴えかけるように彼女を見つめてると思う。  その姿が見えなくなるまで。」 髪をかき上げながら私が笑うと、昴生もつられたように静かに笑った。  今言った春希の気持ちを再現したかのように。  躊躇いがちな笑顔だった。 「大丈夫————綿貫くんの演技は私が保証するよ。」 「うん………ありがとう、侑さん。」 考えてみれば、いつの間にか〈常磐さん〉から〈侑さん〉と呼ばれていたのも驚いたけれど。  それが正しいアドバイスかどうかは正直私には分からなかった。  けれどそこには確かに昴生の気が晴れたような笑顔があった。  これまで昴生は、映画にエキストラのような端役でしか出た事がなった。  だからこの春希役は、例えわずかな登場でも昴生にはけっこう重要だったと思う。  だけど彼にスポットライトが当たる事は殆どなくて、しばらくは芽が出なかった。    俳優はただ顔が良ければ、演技ができればいいというものでもない。  やはり仕事の内容と運も必要になってくる。 あの時はまだ彼にはチャンスがなかった。    それに、たまに同じ事務所の俳優陣達に陰口を叩かれてるのを聞いた事がある。 「あいつのいいとこって、顔だけじゃん。」 「ああ、綿貫?」 「確かに。こないだの映画だってさ———」    「どうせ顔で選ばれたんだろ」  「—————そんな訳ないと思うけど。」      同じ事務所の俳優同士でこんな陰口は気分が悪い。  気づけば私はその数人の背後に立っていた。 「…常磐さん……

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     それからはお互いが忙しくてあまり会う機会がなかったけれど、彼は彼なりに頑張っているという噂を聞いていた。 —————私達には普通の会社員のように朝の〇〇時に仕事が始まって◇◇時に仕事が終わる、という明確な決まりがない。 朝早く仕事が入る事もあれば、深夜近くまで仕事をする時もある。 それぞれが仕事があれば仕事をするし、ない時は演技のためにボイストレーニングや自分磨きをする。 全く別々の時間を過ごす中で、また昴生に接する事になったのは、映画での共演だった。 当時のベストセラー小説を原作とした《真夜中の太陽 明け方の月》という作品。 物語のヒロインは、幼い頃に母親に捨てられた冬美《ふゆみ》という20歳の女性。 その冬美が、自分を捨てた母親がよそで温かい家庭を築いて幸せになっているの知り、復讐を企むというのが大筋の内容だ。 初めは、自分の父親違いである弟・佳《けい》にわざと近付き、自分に惚れさせてからボロボロにして捨てるという計画だった。 しかし冬美は次第に、半分だけ血の繋がった佳に惹かれていってしまい—————。 最大のコンセプトは禁断の愛。 一つの幸せな家族を舞台に、ヒロインである冬美が憎しみと愛との狭間で葛藤し、やがて全てを壊した後で大事なものに気づいた…というドロドロとした愛憎劇である。 ヒロイン役の冬美は私で…昴生はわずかなシーンにしか登場しない、同級生・春希《はるき》という役柄だった。 昴生演じる春希の、最も重要なシーン。 消えた冬美を心配していた同級生の春希《はるき》が、数年ぶりに偶然交差点で彼女を見かけて声をかける。 だが一瞬目が合っても、冬美は春希に気づかず去っていく———というもの。 そのシーンについて、一度だけ昴生に相談された事がある。  「実は、悩んでるんです。俺。

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     侑⃞さ⃞ん⃞、⃞覚⃞悟⃞は⃞で⃞き⃞た⃞ん⃞で⃞す⃞ね⃞?⃞  確かにあなたに一切興味がないと言った。 顔も好みじゃないと。 だけど一つだけ言ってない事がある。 私はあなたの演技にだけは心底惚れていた。 彼は私とは真逆の遅咲きの俳優だった。 12年前———— まだ人気絶頂だった頃に、20歳で俳優デビューした綿貫昴生と出会った。 「初めまして。綿貫昴生です。」 「…初めまして。常磐侑です。」 「知ってます。常磐さんの名前を知らない人なんて、日本のどこにもいないと思いますよ。 むしろそれ、日本人じゃないかも。」 事務所の後輩として紹介された彼は、穏やかな笑顔をして私を見つめていた。 まだ学生のようなあどけなさと、何にも染まっていない素朴さが滲む青年。 少しだけ緊張したような面持ちで、肩にはがっつり力が入っていた。 その初々しさを、今だに覚えている。  「常盤さんには本当にずっと憧れてました。 これからは事務所の先輩後輩として、色々ご指導の程を宜しくお願いしますね。」 「あ……うん。私で良ければ。」 屈託のない顔で微笑まれ、握手を求められたけど、その頃も相変わらず不器用な性格だった私は素っ気なく返事をした。 しかも握手するのに、もたついてしまうという。  どんな役でも演じることができるのに。 私は台本のない素の自分を曝け出すのが、一番苦手だった。  「こら、侑…!ごめんね〜綿貫くん。 侑ってちょっと不器用なとこあるから、言い方は素っ気ないかもだけど気にしないでね。」 当時敏腕マネージャーと言われていた佐久間《さくま》さんは評判通りの人で、こうやって私のフォローをする事も忘れなかった。  その時は昴生

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