「あなた、この二人どういう関係なんだろう?今、そう思ったでしょ」
オネエ口調の横島先生は、俺が疑問に思っていた事をピタリと当てて見せた。
妙に勘が鋭い。
なんちゃらの勘は良く当たる。的な奴なのだろうかと驚き半分、感心半分で頷くと、横島先生は体の前で両手を使い、大きくバツを作って見せた。
「それはトップシークレット!詮索するのはダメ。もちろん、周りの友達に言いふらしてもダメ。────もし破ったら、どうなるか……わかってるわよね?」
オネエ口調の横島先生は普段の十倍は迫力があった。、怒鳴りつけられるよりよっぽど怖い。された事はないけども。
それに、最後に舌なめずりしたの、なにあれ。いったい俺はどうなってしまうんだ……
背筋に悪寒が走り、嫌な汗が流れた。
「しません、しません。しませんよ!もう今後一切、二人の関係性を聞いたりしませんし、詮索もしません。決して誰にも言いふらしたりしません。本当です。信じてください」
両手を顔の前でパタパタと振り、自分にはそんなつもりはないと必死に否定した。
横島先生は疑うような目つきでしばし見たあと、唐突に笑顔を浮かべると、お嬢様のようなしなやかさで祈るように両の掌を胸の前で合わせた。
「そう。それならいい。今回だけは、凛に怪我を負わせた事も不問にするわ。……次はないけどね」
ボソリと最後に呟いた言葉は重低音で、地面を伝ってくるようだった。
「は、はい肝に銘じます」
「お姉ちゃん。き、桐生君をイジメないで」
「イジメてない。これは凛、あなたのためなんだから」
そう言いながら横島先生は滝沢の頭をポンポンと撫でた。
「で、でも、かわいそう」
もう、直接勘ぐるつもりも言いふらすつもりもないけれど、この二人、本当にいったいどんな関係性なんだろう。
担任の男性教師をお姉ちゃんと呼ぶ滝沢はおかしい。
担任男性教師が女子生徒を名前呼びしているのも引っかかる。
元から滝沢はおかしいやつだと思っていた。
けれど、百歩譲ってお兄ちゃんならまだわかる。……それはそれで禁断の関係感が強まることになるのだけれど。
……いや待てよ、もしや、横島先生がオネエだからお姉ちゃんなのか?
滝沢も矢野さんに好意を寄せているわけで、そういったものに寛容な滝沢が、禁断の関係を築いた上で、お姉ちゃんと呼んでいる可能性もあるよな。
なんて考えていた