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Home / 恋愛 / 幸せと呼べない日々 / 第6話

第6話

Author: 過
丈は契約書の終了日を見て、あの頃から私の態度が変わったことを思い出した。

彼は信じられなかった。

私がこの八年間、彼に尽くしてきたこと、細やかに世話を焼いてきたこと。

それがすべて、この契約のせいだったなんて。

「俺の許可なしに、逃げられると思うな」

丈はすぐにスマホを取り、アシスタントに電話をかけた。

私の行方を探すように命じた。

丈が私を探しているということなど、遠くM国にいる私はまったく知らなかった。

その頃の私は、和真と新商品のデータについて話し合っていた。

長い間社会から離れていたせいで、最初は少し戸惑った。

でも、仕事の忙しさに助けられて、その違和感もすぐに気にならなくなった。

数日前、スタジオでスキンケア商品の開発案件を受けたばかりだった。

私は和真とともに、チームを引き連れて毎日残業していた。

ちょうど一つの結論が出たところで、私のスマホが鳴った。

発信者は野上家の使用人だった。

私が家を出たことを知っている人は少ない。

彼はそのうちの一人だった。

彼は言った。

丈は毎日仏頂面で帰宅し、家の使用人たちはいつ彼が爆発するかと恐れていると。

料理も何を作っても口に合わず、挙句の果てに二日ほど私の行方を捜させて、見つからなければすぐに諦めた、と。

そして今では、萌々を家に呼び寄せ、住まわせているらしい。

彼の言葉に、私は少しも驚かなかった。

丈が人を使って私を探したのは、ただ私が突然姿を消したことで、彼の顔が潰れたと感じたからだろう。

数日も経てば、私の存在など彼の中ではもう大したことではなくなっていたのだ。

私は彼の話を聞き流した。

けれど知らなかったのは、彼が電話を切ったあと、少し離れたところで丈が彼を見ていたということだった。

「野上さん……」

言いかけた言葉を、丈が低い声で遮る。

「時雨と連絡が取れるのか?」

丈の鋭い視線に怯えながら、使用人はゆっくりと頷いた。

「もう一度、彼女に電話しろ」

再びその番号からの着信があって、私は少し訝しんだが、結局出た。

「はい、矢口時雨です」

だが、まさか聞こえてきた声が丈のものだとは思わなかった。

「今どこにいる?」

私は数秒沈黙した後、淡々と問い返した。

「用件は?」

丈は執拗に、さっきと同じ質問を繰り返した。

私の残り少ない忍耐が、
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