「さて、これでエリオットの家族の安全は確保された。
俺専属使用人であり、護衛であり、俺の剣や体術の師匠でもある双子がリオの家族の保護に向かった。
彼等は優秀だ。もう君の家族のことは心配いらぬ」
「公爵家の執事も動いた。あの人も……すげえぞ?」
ほっとしたようにエリオットから肩の力が抜けた。
「…………ありがとうございます。
ああ……ようやくボクはボクで動けます」
「うむ。これで君の憂いは取り除いた。
では、ここから本題に入ろう。侯爵はなぜ私を貶めようとする?
私はいわば爆弾。私に害を成したいのならば、自らの死を覚悟する必要がある。
身内を王子の婚約者に据え権力をというのならば、もっとリスクの低い方法もあっただろう。
そもそも私本人が婚約者であることを厭うているのは周知の事実。ならば、私を懐柔し味方につける方が得策のはず。
しかし侯爵はわざわざ寝た子を起こすようなこと、つまり私を貶め、私の評判を傷つけ婚約者の地位から引きずり落とす方法をお前に指示した。
どう考えてもリスクが高すぎる道を。
その理由を君は知っている、あるいは心あたりがあるのではないか?」
そう。引っかかるのはそこだ。
ゲームのアスカはレオンにこだわっていた。懐柔の余地などはなく、ああするしかなかったのだろう。
しかし、今の俺ははっきり言って「喜んで譲ろう!」という立場だ。そもそも婚約を望んでなどいなかったし、レオンに対して悪印象を払拭した今でも「面倒だ」というほうが勝つ。
するとエリオットが真面目な口調でこう問いかけてきた。
「その『婚約者の地位を厭っている』のがアスカ様の本心であるとどう証明できます?
それがポーズである可能性は?ご自分のお立場を優位にするための駆け引きであるという見方もできます」
「はあ?馬鹿にしてんのか?」
イラっとした様子を隠さぬアスナを片手で止めて、逆にエリオットに問い返す。
「なるほど。それが侯爵の見解というわけか」
「ええ」
「その問いにはこう答えよう。
王子の婚約者?準王族というと聞こえはいいが、要は「籠の鳥」ではないか。
たかが『王族』という下らん名ひとつのために、社交だの執務だの面倒なものを背負い込む必要がどこにある?
俺を舐めるな。実力、金、地位も名誉も必要なものは既に持っている。必要なものがあれば自ら手に入れる。
レオンに与えて貰う必要などない。
どうだ?答えに