一方、柾朗は慌ただしく怜緒那の家へ駆けつけた。
彼はコップ一杯の水を注ぎ、怜緒那をなだめて薬を飲ませた。
怜緒那はか弱そうにベッドに横たわり、片手で額を押さえ、もう一方の手で柾朗の服の裾を掴み、弱々しく呻いた。「柾朗さん......薬、飲みたくない......」
柾朗はピーナッツキャンディを一つ取り出し、包みを開けた。
「いい子だ、ピーナッツキャンディを用意したから、これで薬が苦くないよ」
怜緒那は口を尖らせ、甘えるように言った。「忘れたの?あたし、ピーナッツアレルギーなのよ」
柾朗は一瞬呆然とした。杏惟がピーナッツキャンディが好きだったので、杏惟が薬を飲むたびに彼はピーナッツキャンディを用意していたのだ。
怜緒那がピーナッツアレルギーであることを忘れてしまっていた。
怜緒那はこのことで甘え、柾朗に傍にいてくれるように頼んだ。
柾朗は困惑した。少し前に杏惟が言った言葉を思い出し、いつも不安を感じていた。それに彼は杏惟に帰ると約束していたのだ。
怜緒那は柾朗が立ち去ろうとしているのを見て、たちまち涙を流した。
「柾朗さんは怜緒那のことが嫌いになったの?それなら行ってちょうだい、あたし一人でも大丈夫だから......」
そう言いながら泣き続け、危うく気を失いそうになった。
か弱くて可哀想な怜緒那を見て、彼は結局折れるしかなかった。
彼は杏惟に謝罪のメッセージを送り、明日の結婚式の予行演習で会おうと伝えた。
彼はため息をついた。杏惟は今回本当に怒っているだろう。後で改めてきちんと説明するしかないと思った。
翌日、怜緒那を一晩中看病した柾朗は、一刻も早く杏惟に会いたかった。今日は結婚式の予行演習もあるのだ。
しかし、怜緒那は彼と一緒に結婚式の予行演習を見に行きたいと譲らなかった。結婚式の雰囲気を味わいたいと言い、潤んだ大きな瞳には期待が満ちていた。
これでは彼も断るわけにはいかず、承諾するしかなかった。
彼は杏惟に電話をかけ、事前に知らせようとしたが、全く繋がらないことに気づいた。
怜緒那の家から出た時には、もうかなり遅くなっており、約束の予行演習の時間はとっくに過ぎていた。
杏惟とは相変わらず連絡が取れず、LINEもブロックされていた。柾朗の心はますます不安になり、怜緒那を連れて、仕方なく結婚式の予行演習の会場へ向かうしかなかった