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Home / ファンタジー / 月神守は転生の輪舞を三度舞う / 4.全てを消し去る漆黒の力

4.全てを消し去る漆黒の力

Author: 菅原みやび
2025-02-15 08:57:08

 こうして驚きの連続の一日が無事終わり? 翌日の昼を迎える。

 ここは俺の魔王部屋。 

 接客用のフカフカの赤いソファーに優雅に腰かけ、俺と学は談話の真っ最中だったりする。

「……守、ここは慣れたか?」

 学の鋭い問いに対し、俺は「ま、まあ、なんとかね?」と答え 、虚勢を隠すために紅茶をすすり、カップをテーブルに静かに置く。

(てかさあ、正直、魔王としての立場とかまだ色々違和感はあるだよなあ) 

 が、悲観しても仕方がないし、慣れるしかない。

 そう、こちとら幸か不幸か孤児院時代で培ったハングリー精神がある!

 それに現実世界で起きてる紛争とかに比べると、別に絶望的ではないしな。

 見知った学もいるし、忠臣のシツジイもいる。

(立場上、俺は魔王だし、なんとかなるよ。てか、俺がなんとかして見せるさ!) 

 そんな事を考えてる俺に守は「そうか。ところで守は転生した時に『特殊能力が使える事』に気づいているか?」と、腕組みし俺の顔を覗き見する。

 俺は「え? 空飛べる以外に、まだ大それた何かが出来るの? 勿体ぶらずに、サクッと内容を教えてくれよ?」と、驚いたわけだが。

 実際俺は昨日、シツジイに直接指導を受け、嬉しくって大空をガンガン飛びまくった。

(へへっ、だからもう鷹とかツバメとかより早く飛べるぜ!) 

 なんとといっても機動力は早めに確保した方がファンタジー世界では色々便利だしね。

 俺のやれることから直実に詰めていった方がいい。

「流石ポジティブ思考だな。では、そうだな。言葉で説明するより実際見せたほうが早いか……。てことで外に出ようぜ!」

「おう!」 

 てことで、俺達は漆黒の翼を大きく広げ、近くのただっ広い平地まで飛んでいくことにした。

 澄んだ青空を気持ちよく飛びながら俺はふと後ろを振り返り、今飛び出したばかりのザイアード城を眺める。

(うん! 壮観、壮観っ!) 

 城はごつごつとしたクソデカイ岩山をくり抜いて作られた、ゴシック様式の白亜の天然要塞といったところ。

 その城の周りだけ漆黒の瘴気にうっすらと覆われているところがもう、なんか「ザ魔王の城」って感じだ。

 だからか、俺は「なんかこの城ってさ、ドラキュラが住んでそうな雰囲気出てるよな」て、言葉が自然とでてしまう。

 対して学は「ははっ、そうだな。てか俺達今、魔族だからな?」と、飛翔しながら苦笑いする始末。

 俺は自身の頭から生えているねじくれた固い角に触れ、「でしたね……」と答え、しみじみとそのことを実感するしかなかった。

 「……よし、ここだ」という学の呟きに、俺は軽く頷き平地に着陸する。

 そこは程よく伸びた草と木々がまばらに生え、大きな岩々が適度に散在している場所だった。

(なるほど、周囲には建造物もない。魔王として強大な力を振るう訓練にはうってつけの場所ってわけか) 

 よく見を凝らすと粉々になった岩々が多数見られ、学がここで色々修行していたのが予想出来た。

 学は「よし、じゃ見てろよ守?」と、よどみない動きで空手の構えをとる。

 俺は「お、おう!」と、答え、ワクテカしながらそれを静かに見守る。

 すると、学の「せいいっ!」という気合の入った掛け声が周囲に響き渡り、近くにあった大人程あろう大岩に向かって素早く正拳中段突きを放つ!

(え、マジ? おまっ、拳壊れちゃうよ?) 

 俺のその心配とは裏腹に、なんとその大岩は鈍い音を上げ粉々に消し飛んだのだ!

 俺は「す、スゲー⁉」と、感嘆の声を上げ、思わず拍手してしまう。

「ま、これが魔力を身体に宿した魔王の力【魔王拳】ってわけだ! なので当然、お前にも出来る。コツとしては飛ぶときに翼に魔力を転換したろ? アレを拳に集めるだけ、要領は同じだ」 

「成程な」

 俺は学の説明に対し、コクコクと頷く。

「で、これからが本番なので、よく見とけ⁉」

「えっ?」

(ま、まだこれ以上にスゲー事が出来るってこと? マ⁉) 

 何と驚いた事に、「はあああっ!」と、大声を上げ大きく拳を振りかぶった学の右手を見ると、何やらドス黒い握りこぶし大の球体見えるんですが⁈

(な、なんだあれっ⁉ スッゲー禍々しいものを感じるんですけど? ……えっと、どんどん大きくなってきてますけど? なんか大気が震えて、ゴゴゴゴゴゴゴって擬音が聞こえそうな感じなんですけどっ!)

 学の「うおおおおおおおおおっ!」と、凄まじく気合の入った声と共にその漆黒のエネルギー体は猛スピードで数キロ先まで勢いよく飛んでいく!

 しばらくし、爆弾が落ちたんじゃないかってくらいの激しい爆音と共に大気は振動し、砂煙が舞い、その周囲の草木や岩が粉々に消し飛んでいくのが見えた!

 俺はその信じられない光景に思わず「う、うっっっっそ⁉」と、絶叫し、ぼーぜんとしてしまう。

 ほどなくし、砂塵が晴れる。

 すると、見えたその先は何も無い平らな土地に⁉

 そう、驚いた事に先程の余波で、数キロ先にあった山々も粉々に消し飛んでしまったのである。

(じ、地面が割れるレベルじゃなかった。超ヤベーな魔王の力!) 

「ん、てことはもしかして? 俺もなんか強力な能力持っていたりする?」

 そう、だって俺も魔王だもん。

 すると学は俺におもむろに近づき、「勿論。でだ、ちょっといいか?」と、俺の額に軽く手を添える。

「……えっ、何?」

 わけが分からず唖然とする俺。

 対し、学は「ふむ、成程な。お前は『魔王の漆黒の魔力を溜めて放出する能力』だな。ちなみに俺の能力は『魔王の漆黒の魔力を物理攻撃に上乗せする能力』だ」と、頷いていた。

「な、成程。って、お前何でそんなことが出来るの?」

 驚く俺に対し、学は「え……? そ、そりゃ、お前より先に転生して色々知っているんだよ……」と、小声でボソリと呟き、何故か明後日の方を向き、腕組みをしてますが⁉

「あ、まあ、ゲームあるあるだよな!」

 学は人差し指を立て、「そ、そうそう! ただ、強力な技ってのはそれなりにリスクと何かしろの条件があるから覚えとけよ?」と、色々と説明を続けていく。

「へっ? 例えば?」

「俺の技の場合、魔力を限界まで溜めるとさっきの技は一回しか使えない」 

「あー強力な技だしな。あ、ちな、使った後はどうなんの?」

「ペナルティとして魔力が枯渇し、この世界の人間並みの身体スペックになる。つまり、先ほど俺が軽々と壊した大岩も当然破壊できなくなる」

「じゃ、使いこなして自分の魔力の限界値を知っとかないとか」

(成程、強力な技として使用制限とそれなりのリスクが当然あるわけか……。まるでゲームみたいだよなホント) 

「ふふ、流石賢いな?」

「へへっ、まあ、伊達に賢者の異名はとってないぜ! でさ、それはいいとして魔力ってどうやって放出すんの?」

 そう、俺は魔力放出の仕方は習ってない。

 だからコイツに教えてもらうしかないのだ。

「それはな……」

 そんなこんなで、しばらく学から手ほどきを受ける俺。

 その結果、ある程度の魔力放出コントロールが出来るようになっていた。

 俺の「おおおおっ!」という、気合と共に具現化された漆黒の魔力が頭上に現れる。

 東京ドームくらいの大きさの赤黒い球体。

 それはゆっくりと近場の山に飛んでいき全てを闇に葬り去っていく。

 それが通った後は何も残らない……無、ただの無のみ。

 その証拠に、山だった場所は巨大な球体に飲み込まれた凄惨なクレーターの跡が残されていたのだ!

「や、やべーなコレ……」

「ああ。強力すぎる。しかも、見ていた感じコントロールが難しそうだな」

 俺達はその凄惨さにドン引きし、青ざめていたりする。

「な、何だよこの超巨大ブラッホールみたいな殺人兵器。こんなの俺、使いたくねーよ!」

「ふむ、そうか。強力そうなんだがな、惜しい。あ、そうだ! そんなお前の能力にピッタリな制御マジックアイテムがある。城に帰ったらヒツジイから貰っておけ」

(よ、良かったあ。俺、こんな全てを無にする魔王みたいな能力なんか使いたくねーしな! あ、魔王デシタネ! サーセン)

 制御アイテムの存在に、ほっと胸をなでおろす俺でした。 

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