それから数か月後。
ここは再び人の国ファイラス城。
血相を変え、赤床の回廊をかけていく王女雫。
(ファイラスの王子達が大戦のためザイアードに出兵し、監視が極端に緩んだ今しか抜け出せないないなんて……)
「は、早く二人の元に行かないと、大変な事に……!」
雫はファイラス城内から王家のみが使用できる転送装置を使い外に抜け出すことに成功していた。
その転送先はファイラスとザイアードの国境近くに配置されている古代遺跡。
勿論遺跡の中には誰もいない。
理由は、一部のの特権階級しか知らない秘匿情報であるからだ。
なお、雫がこんなに必死になっているのは理由がある。
雫がここ最近集めた情報によると、「大戦はこの遺跡から近い国境近くの場所で決着するシナリオ」と知ったからだ。
幸いファイラス軍が国境にたどり着くのは数日はかかる。
であるからして、雫はそれまでになんとかザイアードにいる学と守に会って、それを伝えたいのだ。
雫はぼんやりと不思議な青白い光を放つ転送装置を見つめながら、なんでも入る魔法の鞄にしまっていた魔法のスクロールを次々に取り出していく。
そこから飛び出すは、立派な1つの角を持った銀色のたてがみをなびかせ、いななく一頭のユニコーン!
雫は「ああっ! このままでは、学達が……。ユニコーン急いで、お願いね?」と、逸る気持ちを抑えきれず、ユニコーンに急いで跨りかけていく!
雫は覆ったものの姿を消す魔法のマントを羽織った後、『ザイアード』の城に向かい電光石火の如く爆走していくのだった。
♢
一方その同時刻、此処は守達がいるザイアード。
学はファイラスからの文書を見て「な、なんだとっ! あの馬鹿人間の王子どもっ! く、くそっ!」と、血相を変える。
更にはその文書を力いっぱい床に叩きつけ、学は急いで城外へ飛んでいく。
それを自室から偶然目撃した守は「なあ、学がアホみたいなスピード出して急いで外へ飛んでいったけど何かあったのかな?」と、目の前に静かに佇むシツジイに尋ねる。
対し、シツジイは「さ、さあ? おそらく、その、いつもの鍛錬に行かれたのでは?」と、何故か申し訳なさそうに小声で答える。
(怪しい……。この感じ絶対何かあるよな? ま、いいか)
「……ところでさ、例の同盟の話は進んでる?」
「す、進めてはいますが、『エルシード』からは何も