病室のドアが押し開けられ、綿が振り向くと、秀美が入ってきた。
秀美は尋ねた。「明くんはどこにいるの?」
「胃の具合が悪くなったので、急診に連れて行き、点滴を受けてもらいました」綿が答えた。
秀美は少し驚いた表情を見せたあと、ため息をついた。「この子、本当に心配ばかりかけて……綿ちゃんがいなくなってから、あの子の生活はまるで破綻してしまったようなもの。綿ちゃん、私は……」
秀美は綿を見つめた。何か言いたげな様子だが、目の前の彼女を見ているうちに、言葉を飲み込み、何も言わず、ただ深いため息をついた。
綿は秀美を見つめ、その姿に心が締めつけられる思いだった。
おばあちゃんが倒れ、輝明が次々と問題に直面し、家のことはすべて秀美が背負わなければならなくなった。
しかし、彼女も仕事を持つ身だ。
大人の世界は本当に厳しく、不条理なものだと感じた。綿は彼女を気遣い、できるだけ力になろうと思った。
「おばさん、もう何も言わないでください」
綿は微笑みながら秀美の肩を軽く叩き、続けてこう言った。「これから毎朝、おばあちゃんの様子を見に来ます」
「分かったわ」
秀美は感激した表情で頷いた。
美香が綿を可愛がったのも納得だ。綿は家族の中でも特に孝行で、秀美にとっては感謝の念でいっぱいだった。
モニターには、おばあちゃんの心拍が徐々に安定していることが表示されていた。
綿は安心して秀美に挨拶をし、部屋を出た。
彼女は小林院長にメッセージを送った。【院長、おばあちゃんに救心薬を飲ませました。状態は落ち着いています。引き続き、病院での見守りをお願いできればと思います】
小林院長からすぐに返信があった。【わかった。桜井先生、こちらも全力でサポートする。一緒に頑張って、お祖母様を必ず元気にしましょう】
彼は綿と連携できることを喜び、いつか彼女が段田綿として病院に来て、さらに多くの人を救うことを願っていた。
綿が緊急室に戻ると、輝明は眠っていた。
きっと相当疲れているのだろう、眠っていてもおかしくない。
彼女は病床のそばに立ち、彼の眉と目を見つめて複雑な感情を抱いた。
看護師が入ってきて点滴を確認し、小声で話しかけてきた。「桜井さん、お帰りなさい」
綿は頷き、看護師